暴力行為根絶宣言(13.8.14)
極めて残念なことであるが、2012年に女子ナショナルチームにおいて指導者による暴力事件が発覚した。言うまでもなく、身体的暴力であれ、非身体的暴力であれ、そのいずれであっても、暴力は被害者の人権を著しく侵害し、人間の尊厳を否定し、指導者と競技者、競技者相互の信頼関係を根こそぎ崩壊させる卑劣な行為である。また、暴力は、どのようにその正当性を主張しても、到底許されるものではない。今日の社会においては、柔道における暴力の行使は、柔道が社会的に存在することの否定につながる行為であることも自覚しなければならない。
一方で、優位な立場にあるものが暴力をもって相手を服従させ、自我を強要する現実がいまだにある。暴力による指導の効果は表面的なものであり、一時的なものでしかない。嘉納師範が創出した柔道の教えのどこを見ても、暴力を是認する言葉などない。本来、柔道は、身体訓練に高い精神性が求められ、暴力とは無縁のものである。また、柔道の指導は言葉を尽くして行うべきものであり、暴力によって柔道の本質を捻じ曲げることがあってはならないし、柔道における暴力の存在は決して許されないものである。
全日本柔道連盟は、全柔道人の総意として、ここに暴力行為根絶を以下の通り宣言する。
○柔道指導者は、暴力が、殴る、蹴るなどの身体的なものであれ、威圧や脅迫、暴言などの精神的なものであれ、すべての暴力行為が人権の侵害であることを自覚し、暴力による強制と服従では優れた競技者や強いチームの育成が図れないことを認識し、暴力行為が指導における必要悪という誤った考えを捨て去る。
○柔道指導者は、指導を受ける者自らが考え、判断することのできる自立的能力の育成に努力し、指導者と指導を受ける者相互の信頼関係の下、常に指導を受ける者とのコミュニケーションを図ることに努める。
○柔道指導者はもとより、柔道を行うすべての者は、理由の如何を問わず、いかなる暴力行為も行わず、また周囲の者も、いかなる暴力行為を黙認せず、柔道の場からのあらゆる暴力行為の根絶に努める。