プロフィール
石戸 美奈(いしと みな/旧姓:渡邉)
1985年 茨城県生まれ
秋田県大仙市立大曲中学校臨時職員
講道館柔道女子参段
主な戦績:
2009年 世界選手権(ロッテルダム)70㎏級 3位
2009年 全日本選抜柔道体重別選手権大会 70㎏級 優勝
2009年 グランドスラム東京 70㎏級 優勝
2006、2007、2009年 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 70㎏級 優勝
こんにちは、石戸美奈と申します。毎回楽しみに見ていたJJ Voice。バトンを回してくれた笠井(旧姓:濱口)光ちゃんは、いるだけでその場の空気が明るくなり、みんなの心が安らぐ、そんな素敵な女性です。回してくれてありがとう。
私が柔道始めたのは九歳の時でした。オリンピックで柔道の試合を見て影響を受けた私は、いつも柔道の真似事をしていました。そんなある日、学校に偶然にも柔道教室のチラシが貼ってあったのです。やり始めたら最後までやるという父との約束で、私、妹、弟の三人で始める事になりました。週に一度の練習でしたが、帰り道のご褒美のアイスを楽しみにしていたのを覚えています。地元の中学校には柔道部がなかった為、中学ではバスケット部に入る気満々だったのですが、いつの間にか私より柔道に夢中になった父に却下され、柔道部のある別の中学校に進学する事になりました。そこでの練習はハードで、毎日のように泣きべそをかいていました。しかし、そこで恩師と出会い、やればやるほど強くなれる楽しさを知り、いつの間にか柔道が好きになり、高校でも柔道を続ける事になります。高校では、教科書を「柔道部物語」に持ち替え、研究を重ね、ひそかに女版「三五十五」を目指していました。
そして高校卒業後、コマツ、了德寺学園と実業団でお世話になり、結婚を機に競技としての柔道から離れる事になりました。現在は、秋田県で中学校の臨時職員をしながら、スポーツ少年団での指導に携わっています。家庭では、三ヶ月と五歳になる二人の息子の母親です。みんなから顔色一つ変えないでクールだねと言われていた私が、毎日赤ちゃん言葉を連発しながら子育てをしています。秋田に来てからは、スポーツ少年団の他、中学生の指導や高校の外部コーチをしたりしながら今に至りますが、指導者となり、選手と関わるってこんなに大変なんだなと日々実感しています。しかし、それ以上に子ども達から学ぶ事が多いです。指導者としてまだまだ未熟な私ですが、一人一人に真剣に向き合って信頼してもらえる指導者を目指しています。有難い事に、練習の時には保護者の皆さんに息子達を見ていただいています。周りの先生方や保護者の皆さん、家族の助けがあって母親になった今も柔道に携わる事が出来ている事に感謝の気持ちでいっぱいです。
実は、私は一人目を出産後、全日本実業柔道個人選手権大会に出場しました。結婚を機に一線を退いていたものの、正式に引退したつもりはなく、また大会に出てみたいと思い続けていたからです。結果は一回戦負けでしたが、試合に向けて練習出来た事、久々の緊張感、挑戦出来た事が嬉しかったです。ブランクがあり正直不安でいっぱいでしたが、打ち込みパートナーを快く引き受けてくれた先輩、私一人のために遠くから応援に駆けつけて下さった方、父、息子、たくさんの応援で勇気をもらいました。かっこいい姿は見せられませんでしたが挑戦して良かったです。やりたいと思ったら挑戦してみる、それって大事だなと、それに私って柔道が好きなんだなと改めて感じた試合でもありました。
先輩方のご尽力により、最近では全国大会などで託児スペースが設置されたりと、女性が活動しやすい環境が整ってきました。このような試みが全国各地で実施されるよう、私も地方で出来ることを考えていきたいです。そして結婚、出産を経ても当たり前のように柔道に戻って来られる、そんな柔道界になる事を願っています。私は、他の方々に比べたら、今現在の柔道への関わりが特別深い訳ではありません。それでも、これからも挑戦する気持ちを大切にして柔道を続けていきたいと思います。
次回は、石戸さんのコマツ時代の先輩にあたる、岩田千絵さんが登場します。