プロフィール
田村 恵利(たむら えり/旧姓:垣田) 1986年 兵庫県生まれ
兵庫県警察
講道館柔道女子五段
主な戦績:
2007年・2015年 講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 52㎏級 2位
2009年 アジア柔道選手権大会(台北) 52㎏級 3位
2015年~2017年 全国警察柔道選手権大会 52㎏級 優勝 3連覇
皆さんこんにちは。前回執筆された秋元由香(旧姓:柏木)さんは同級生。初めて彼女を見たのは小学5年生の時、広島県で行われた大会に参加した時でした。その大会で男の子に勝ち、上位に勝ち上がる彼女のことが強烈に印象に残っています。その後、お互いに知ってはいるもののなかなか接点がなく、大学生の頃に急接近!今では育児の悩みや相談ができる良い友人です。
簡単に自己紹介させていただきます。私は兵庫県宍粟市で生まれ、3人姉弟の一番上で弟が二人います。一つ下の弟は体が弱く、彼が柔道を始めたことがきっかけで私も小学1年生の時に柔道を始めました。初めのうちは、週に2回の稽古が嫌で、道場に行く時間になると泣きながら家の柱にしがみついて行くのを拒否していました。それでも、『やると決めたのだから頑張りなさい!』と母に連れられ通っているうちに、あっという間に初めての大会に出場。その大会は小さく、同じ道場の同級生と私を含めた三名だけでした。2回試合をして2回とも負けてしまいました。当時はやる気もなく、まじめに練習していなかった私ですが、この試合で負けたことがとても悔しくそれがきっかけで、『強くなりたい!』と思うようになり、そこから真剣に柔道に取り組むようになりました。
その後、高校生時代に初めてジュニアの強化選手に入ることができました。大学へ進学し、シニアの強化選手に上がり、これからだ!という時に、左膝の前十字靭帯を断裂し手術を受けることに。出場する予定の国際大会もキャンセルとなり、強化選手も外れてしまいました。今、当時を振り返ってみると色々な思いが蘇ります。
2010年に兵庫県警察官を拝命し、柔道特別訓練員として各種大会に出場するなど、約8年間の選手生活を送りました。そして、2017年の講道館杯を最後に現役生活を引退し、25年の柔道人生に幕を下ろしました。
泣き虫で、練習嫌いだった私が25年という長い間、柔道を続けて来ることができたのは、ともに汗と涙を流し合った仲間や、叱咤激励してくださった先生方はもちろん、応援し励ましてくれた職場の皆さんをはじめ、たくさんの方々のお陰です。現役を離れた今、改めて周囲の方々に支えられていたのだと痛感し、感謝の気持ちでいっぱいです。
現役生活を終え、妻となり2019年に妊娠・出産し一人の男の子の母となりました。そして、今年4月から職場復帰し兵庫県警察で『新米教師』として、警察官に対して柔道や逮捕術を指導すると共に、各企業や学校からの要請に応じ、女性に対しての不審者対策や護身術指導なども行っています。
毎日驚くほど早く時間が過ぎ、気が付けばあっという間に一日が終わっています。子育てをしながら仕事をするということは簡単なことではありませんが、サポートしてくれる夫や両親、そして職場の方に支えられながら多忙な日々を送っています。そんな中で子供の笑顔や成長する姿を見ることが何よりの癒しであり、私の元気の源です。
選手時代もそして今も、決して一人の力ではなく、周囲の方の協力や支えがあってこそ、警察官として、柔道教師として、そして母としての『自分』でいられるのだと思います。柔道を通してたくさんの方々への感謝の気持ちを学びました。今後もこの気持ちを忘れることなく常に向上心を持ち、女子柔道の発展に微力ながらも貢献していきたいと思っています。
現在、女性警察官の採用拡大が進み、たくさんの女性がそれぞれの部門で活躍しています。それに伴って女性に向けた福利厚生も充実しています。仕事をする上で男女の差はなく、配置やキャリアアップは本人次第です。もちろん過酷な面もたくさんあります。しかし、警察官の仕事は、柔道と同じく『自他共栄』の精神で仲間と協力してこそできる仕事が多く、柔道を通して培ってきたことが発揮できる職場だと思います。これから就職活動する皆さん!!警察官も選択肢の一つとして考えてみて下さい。
次回は、強化選手時代からの仲であり、現在は同じ関西地区の警察官である市橋寿々華(大阪府警)さんが登場します。