⒊自己決定理論⒉早期専門化⒈相対年齢効果はなく、さまざまな運動を経験させることで、多様な運動能力を育み、将来的なスポーツの専門化の可能性を広げる。◦自律性を支援する:選手が自ら考え、行動できるよう、自律性支援環境を構築する。練習メニューや試合の戦略などを決める際に、選手の意見を積極的に聞き、取り入れる。練習方法や課題の難易度など、可能な範囲で選手に選択肢を与える。選手が自ら目標を設定し、その達成に向けて努力できるようサポートする。選手の努力や成果を認め、自信や有能感を高めるようなフィードバックを与える。選手同士、そして指導者と選手の間で、良好な人間関係を築き、所属意識を高める。◦多様な才能を育む:画一的な評価基準ではなく、多様な評価軸を設定し、選手一人ひとりの才能や個性を伸ばしていく。競技力だけでなく、指導力、審判能力、柔道文化の伝承など、さまざまな分野での活躍を支援する。延ひいては、培った能力を社会で応用できるようにする。◦インクルーシブな環境を作る:心理的なディスアビリティを持つ選手を含め、すべての人が安心して柔道に打ち込めるような環境を作る。これは、同じ学年の中でも、生まれ月の早い子どもが有利になる現象のことです。発育・発達の早い子どもは、競技においても早期に成功を経験しやすく、その結果、自信やモチベーションを高め、さらに練習に励むという好循環を生み出す傾向があります。一方、生まれ月の遅い子どもは、相対的に不利な状況に置かれ、フラストレーション(不快感やいらだち)や自信喪失から、スポーツを諦めてしまうケースも少なくありません。例えば、サッカーにおいては、4月から翌年3月までの学年制を採用しているため、生まれ月の早い選手ほど、身体能力や技術レベルで早期の優位性を持つ傾向があります。この早期の優位性が、その後の競技人生に大きな影響を与え、エリートの水準に到達する選手の多くは、生まれ月の早い選手に偏っているという研究結果も報告されています (Helsen日本の柔道においても同様の傾向があることがわかっています。特定のスポーツに幼少期から特化して取り組むことは、短期的には競技力向上に繋がる可能性があります。しかし、長期的には、バーンアウトやケガのリスクを高めるだけでなく、多様な運動経験を積む機会を奪い、運動能力の発達を阻害する可能性も指摘されています。これは、(以下、意図的練習)」理論が、ある種のイデオロギーとして広まったことも影響していると考えられます。意図的練習とは、ただ漠然と練習を継続するのではなく、高度に構造化された意図的、計画的な練習のことです。Ericssonは、さまざまな分野で一流に到達した人たちの経歴を調査し、彼らが早期から長期間にわた(1985) が提唱したタレント発掘・育成Vanって意図的練習を継続してきたことを明らかにしました。この研究は、Bloomモデルを支持する根拠の一つとして用いられるようになりました。Bloomは、エリートアスリートの多くが、幼少期から集中的なトレーニングを積み重ねていることを実証研究に基づいて示し、早期からの専門的トレーニングがエリートレベルのパフォーマンス達成に不可欠であると主張しました。しかし、Bloomのタレント発掘・育成モデルは、早期専門化によるバーンアウトやケガのリスク、多様な運動能力の発達阻害といった問題点を軽視しているという批判もあります。例えば、Coteは、さまざまなスポーツのエリートアスリートを対象とした縦断研究を行い、12歳まで複数のスポーツを経験したアスリートのほうが、その後、特定のスポーツで高いレベルに到達しやすいという結果を報告しています。柔道指導において、選手のモチベーションを高め、持続的な成長を促すためには、自己決定理論の理解が不可欠です。自己決定理論とは、人間の行動は、自律性、有能感、関係性の3つの心理的欲求によって動機づけられるという理論のことです (Deci主義や過度な指導は、選手の自律性を損ない、内発的動機づけを低下させる可能性があります。簡単にいうと、人は「自分で決めたい」「できるようになりたい」「誰かと繋がりたい」という欲求を持っ日本の柔道界においても、競技人口の減少は著しく、その背景には、相対年齢効果、早期専門化、自己決定理論、制御行動、そして運動有能感や自己効力感などが複雑に絡み合っていると考えられます。これらの課題を克服し、選手が生涯にわたって柔道を楽しめるようにするためには、指導者は、選手一人ひとりの状況を把握し、それぞれに合った指導を行う必要があり、具体的には、以下のような点に注意することが重要となります。◦発達段階を考慮する:選手の発育・発達段階を考慮し、身体的・精神的な負担を軽減する。年齢や発達に合わせた練習メニューや指導方法を採用することで、選手のバーンアウトやケガのリスクを減らし、長期的な育成を促すことができる。◦多様な運動経験を促進する:幼い頃から特定のスポーツに特化させるのでWnckel,Ericsson (1993) の「deli&,,i,,i, ) &HackfortilliamsLdorRyan1985)。勝利至上practice (2009&W2005)。これは、berate全日本柔道連盟指導者養成指針解説5まいんど vol.43
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