まいんど vol.43 全日本柔道連盟
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46 20 24んよ日本における人口減少(少子化)の問題は避けて通ることができず、柔道のみならず、スポーツを愛好する子どもの数が激減し、「スポーツを通して、その種目が楽しいと思える要因、魅力の享受や、人づくり、国づくりに寄与できる心身の健康の涵かう養、あるいは社会的規範の獲得」等の機会が結果として減衰していくことは否めません。以上の点を踏まえると、『特定の目的だけに固執しすぎることなく、発育年齢等に合わせた適切な「環境」を継続的に与えることが重要となり、心身の生涯発達を長期的な時間軸で捉えていく長期育成の視点こそ重要である』という「長期育成指針」の作成は、実に頼もしく思います。冒頭で示したように、少子化によって、一緒にスポーツで競い合う子どもの数が減少しています。その影響で、チームゲームの魅力も半減し、協同や競争の場面設定が不確定になる、あるいはなくなっていくことは、スポーツ実践に対する動機そのものも低減させてしまうため、子どもがスポーツを選択しないという負のスパイラルを促進してしまう恐れがあります。いわば子どもの身体的な発育発達のみならず、心の発育発達の機会の喪失を招くことにもなりかねません。ところで、心の発育発達の一側面を示す欲求充足については、階層的にその必要な要素が異なり、健全な心の発達・成長のためには、それぞれの発達階層で確実にその欲求を充足する必要性があります。本稿では、子どもの欲求充足と柔道(スポーツ)との関係について、若干の知見をご紹介します。運動やスポーツを始める時期は、一般的には学童期が多く、特に低学年から中学年では、家庭への帰属、学校・クラスへの帰属、スポーツチームへの帰属欲求が強くなります。そのため、社会規範が著しく発達する時期でもあり、自身が所属する環境規範を遵守(教員、指導者の影響)しようとする傾向が顕著に強くなります。相手と直接組んで練習できる柔道は、これらの帰属・所属欲求を満たす特性を有しています。楽しい雰囲気の中で、チームの一員であることを実感できる練習環境下では、練習相手とのコミュニケーションも活発になり、柔道そのものにのめり込んでいくはずです。そして、学童期中期から承認の欲求が強くなり、重要な他者に褒められたい、認められたいという気持ちが高まります。一方で、子どものスポーツ環境下においては、「試合の過熱化」と「子どもの承認欲求の強さ」が密接に関係していることは自明の理です。指導者や保護者が、勝利至上主義に走れば走るほど、つまり大人が勝つことを善として、それを子どもに望むことで、子どもはその大人の願望を叶えることに集中するようになります。なぜならば、それが子どもたちにとって、大人から承認を得て自身の欲求を充足する術になるからです。以上のように、指導者(大人)の競技化への傾注によって、子どもの社会性や心の発達が阻害され、健全な欲求充足が図られないことをご理解いただけたと思います。そのような意味においても、指導者のみなさまには「長期育成指針」をさらに咀嚼され、指導者自身が「子どもの自己実現」を使命として、柔道普及にご尽力いただくことを願うばかりです。Contents3まいんど vol.43公益財団法人全日本柔道連盟教育普及・MIND委員会 委員長高橋 進巻頭特集柔道の未来を担う指導者養成のために 全日本柔道連盟指導者養成指針解説 レポートパーク24presentsグランドスラム東京今回も東京体育館、満員御礼!試合はもちろん、ブースや多彩なイベントで大盛況! 連載普及の広場 やわら通信 伝統を歩く THE柔道人 L’Esprit du Judoコラボ企画 海外「JUDO」ホントのところ 柔道ゼミナール~メディカル編 柔道ゼミナール~栄養&レシピ編 登録係からのお知らせ 委員会インフォメーション FROM事務局 国際合宿&ウクライナジュニア選手団招聘 技による決着目指しIJFがルール変更! 全日本柔道連盟「長期育成指針」と「子どもの欲求充足」との関係について2025.2 Vol.43 4 10 13 14 16 22 26 28 32 34 36 39       

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