まいんど vol.43 全日本柔道連盟
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(日本)柔道を愛する仲間たち 周します。1周することで、だいたい学生全員の顔を見ることができます」そうすることで今日はこの子は暗いな、明るいなとか、今ちょっといい調子だな、悩んでいそうだなと、あいさつの仕方でだいたいわかるそうだ。さらに、技術指導はどのようにされているのかも質問してみた。「これに関しては、全体課題と個別課題に分けるようにしています。全体の課題と個別課題とは違うので、チームには全体課題を施します。例えば打ち込みの時間をとる。という課題を全体に伝える。その中で、個別にそれぞれ課題を与え指導します」そして、練習の量と質についての大変興味深いお話。「よく練習の量と質ということを言われたりするのですが、僕は量を求めないなんて一言も言っていません。だけど、質が一番大事だとは思います。その質が1本、また1本と繋がっていって初めて絶対量になると思っています。それをただ単に漠然と20本やったから、30本やったから、だから勝てるというのは、それは根拠がなくおかしいと思います。なので、どれだけやったかじゃではなく“何をやったか”という積み上げを“どれほどやったか”だと思います」私(筆者)には量も大事だと思える…。「量は、その量をこなせる域に到達した一流と呼ばれる選手(例えば、教え子でいうと羽賀龍之介、王子谷剛志、太田彪雅、ウルフアロン、村尾三四郎等)がやれば良いと思います。最初に量ありきと考えると、ケガにもつながります。少なくとも誰とやって、どういうところがダメだったのかを自分で感じておかないと次に繋がらないとよく人に言われたりしますやるしかないんでその子に対してのいろいろな思いを持っている人たちがたくさんいる。大勢の人数が集まるからといって、それが薄まるわけではない。僕は一人ひとりをちゃんと見る作業から入ります。だから、部員140人いても1/140ではなく140/1です。そういう思いでやっています。そんなことできるの? けど、やっています! す!」ときっぱり言われた。できるかできないかではなく、やる。そこからしか指導はできないという監督の強い信念を感じた。そして、具体的にやられていることもお聞きした。「まず、僕は観察をします。人間観察。なので、学生が1年生の間はほとんどずっと観察しています。その子はどういう特徴があって、どういう考え方を持ち、どういう思考で練習しているのか。道場に入ったら1か所に留まるのではなく、すぐに1度1名門大学を率いる名将経歴ご出身は熊本県。遊び感覚では小学1年監督としてのポリシー柔道人第22回上水研一朗私(筆者)がうかがいたかっその後、東海大相模高校、東海大学、大学院・実業団(ALSOK)と進んだが、2002年に現役を引退し、その年の11月から04年の9月までアメリカ・アイダホ州立大学に留学。帰国し東海大学職員を経て、講師になり、教員人生が始まった。他のインタビューを拝聴したら、引き受けるにあたっては、ご自身の覚悟と努力が報われる柔道部を作りたいという思いを話されていた。では、柔道部員とどう接しているのか? たのは140人もの部員をどのように指導されているのか?「やはり、対象者は人間です。強い選手、弱い選手がいるのは当然ですけど、それぞれがいち人間です。それを忘れないようにしています。そして、いち人間ということは当然、その子には親がいて、関係者がいて、上水研一朗監督は東海大学男子柔道部140人以上を率いている。東海大学柔道部といえば柔道レジェンドたちの出身校。その柔道の名門校の監督としての実績は2008年監督就任1年目から2014年まで優勝大会7連覇達成。2016年から2022年まで途中コロナ禍があったが6連覇。2023年は苦杯をなめたが、翌24年に王座を奪還した。正に名将である。生くらいから柔道をやっていたそうだが、本格的に始めたのは5年生から。父が中学校の教員で、柔道部の監督でもあった。父は厳しく、中学生の頃は柔道が本当に苦痛だったとのこと。しかし、八代第三中3年の時には全国中学校大会78㎏超級で2位に。苦痛だっただろうが、それでは続けるしかなかったのだろう。(文=ピエール・フラマン/広報委員)PROFILEあげみず・けんいちろう熊本県八代市出身、1974年6月7日生まれ。柔道七段。現役時代は95kg超級、身長183cm、体重125kg。得意技は内股、大内刈、体落。東海大学体育学部武道学科教授・男子柔道部監督(2008年~現在)。全柔連国際委員長。平塚柔道協会の奥山晴治会長は上水について「若くして品格を備えた人物」と評価している。 柔道の魅力は尽きない。畳の上で勝負している現役選手も魅力的だが、これまで「THE 柔道人」で紹介してきた方々を含め、社会に出て活躍している素晴らしい柔道家もたくさんいる。しかし、いま柔道をする人は減少する傾向にあると言われている。柔道をする人が増えるためには何が課題なのだろうかと今回は東海大学体育学部武道学科教授、男子柔道部 上水研一朗監督に聞いてみた。10分なら10分。こういう目的でやりなさいTHE24まいんど vol.4306年4月から東海大学体育学部武道学科の勝つための指導ではなく、人を創る指導

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