栄養&レシピ編柔道選手の免疫力は高い?体を冷やさない工夫冬の食事・補食について柔道選手、スポーツ選手は、普段から体を鍛えているので、カゼをひきにくいイメージをお持ちかも知れません。しかし、実はスポーツ選手はカゼをひきやすいのです。図1は、運動量と上気道感染症(カゼ症候群)のリスクとの関係を表した図です。適度な運動は、上気道感染症のリスクを下げます。しかし、高強度の練習が続くとカゼをひくリスクが上がることが研究でわかっています。なぜ、リスクが上がるのか。運動は、ヒトにとってはストレスになります。通常はストレスホルモンが分泌され、ストレスから体を守る反応を起こします。しかし、運動強度が上がり高ストレス状態が続くと、ホルモンの分泌バランスが崩れてしまい、免疫力が落ちやすくなります。練習時間が長くなる、強度が高くなる時は免疫力が落ちやすくなりますので、注意が必要です。そのほか、運動だけでなく、睡眠不足、不規則な生活習慣、栄養バランスが崩れた食事、無理な減量も免疫力が落ちやすくなります。つまり柔道選手、スポーツ選手は、免疫力を落とさないためにバランスよい食事、十分な睡眠、こまめな水分補給を行うことが大切です。栄養とは別の話になりますが、柔道場に到着し、着替えて待っている間も体を冷やさないような工夫が必要です。柔道場によっては、エアコンがないことがあります。稽古が始まれば、体は温まります。しかし、待っている間、裸足のまま、上着を着ないままでは体が冷えてしまいます。柔道の国際大会では、国によってはウォームアップエリアに暖房がなく、外の冷たいすきま風が入ることがあります。選手は、試合前、試合を待っている間にさまざまな工夫をし寒い冬になるべくカゼをひかないようにする方法はありますか?稽古前、稽古後に体を冷やさないように、くつ下やカイロ、ベンチコートなどを利用する。補食に温かいスープ、ココアを飲むと体を温めるだけでなく、エネルギーを補給することができます。つい最近まで暑い日々が続いていましたが、まもなく寒い冬の到来です。暖冬と予想されてはいますが、それでも、カゼをひきやすい季節であることは間違いありません。頑強そうに見えて、実は免疫力は低いと言われるアスリート。寒い時期の体調管理はどのようにしたらいいのか。今号では、冬の食事、補食についてお話しします。図1 運動量と上気道感染症のリスクとの関係D C Nieman.Exercise, upper respiratory tract infection, and the immune system.Medicine and science in sports and exercise. 1994 Feb;26(2):128-39.稽古前・稽古後、体を冷やさない工夫(複数組み合わせる)34まいんど vol.42上村香久子PROFILEうえむら かくこ管理栄養士/調理師。全日本柔道連盟強化委員会科学研究部員、JOC強化スタッフ(情報・戦略、医・科学スタッフ)。12年ロンドン五輪では柔道女子、16年リオデジャネイロ五輪から柔道男女の栄養サポートを行うAQ
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