まいんど vol.42 全日本柔道連盟
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部活動地域移行は、柔道界にとってはチャンスであるとともにピンチです。国の施策として行われていますが、財政等の問題もあって進捗状況は地域によって大きな差があります。そのなかで、中学校で柔道を始める生徒を減らさないことを目的として「中学校柔道振興協議会」を立ち上げました。中学校部活動地域移行に向けて~「中学校柔道振興協議会」発足~地域移行に伴い、中体連の試合に中学校以外の団体の出場が可能となりました。地域の道場やクラブに通う小学生が、中学生になっても柔道を続けられる環境が整ってきました。各地の団体が活動を活発化しており、柔道界にとって喜ばしいことです。ぜひ長期的な展望に立って子どもたちの育成をお願いします。地域によって事情は異なりますので、全柔連は基本対策として5つの柱を立てています(まいんど39号参照)。一方、大きな問題が残ります。このままでは中学校で柔道を始める中学生がいなくなってしまうのではないかという懸念です。柔道は気軽に始めることが難しい、ある意味敷居の高い競技です。都道府県によって差はあるものの、中学生柔道人口の約3割~4割は中学校で柔道を始めています。5割を超えている県もあります(富山県柔連グラフ参照)。もしも中学校に柔道部がなかったら、これらの生徒は町の柔道クラブの門をたたいて柔道を始めるでしょうか…。「中学生になったら柔道を始めよう」と思っている生徒はごく少数です。入学した中学校に柔道部があり、知っている先生や先輩から勧められたり、同級生に誘われたりして入部した子が大部分です。未経験者にとっては、身近に柔道が存在することが重要なのです。では、地域移行で柔道部がなくなってしまったら、中学校から柔道が消えてしまうのでしょうか? ません。部活動でなければいけないという訳ではありません。地域の柔道家の方や柔道を指導したくて教員になったという先生が、学校長の許可を得て学校で活動すればいいのです(※注1)。部活動でそんなことはありあれ地域クラブ活動であれ、未経験者の近くに柔道があれば敷居は低くなります。ただし、問題は残ります。部活動でなくなると、傷害が発生した場合に日本スポーツ振興センターの給付が受けられません。指導者に指導責任が生じた場合に国家賠償法の適用が受けられません。活動維持費も自己負担、受益者負担となります。このようなリスクを前にして、地域クラブ活動指導をためらう指導者が出てくる可能性があります。困難な課題に遭遇した時、一番の味方となるのは何でしょう。お金ですか? 間違いではないでしょうが、もっと大切なものがあります。想いを同じくする仲間です。課題を共有して解決策を考えたり先進的な事例を学習したりする組織があれば、前を向いて進む意欲が生まれます。組織としてまとまれば、自治体や教育委員会に要望等を提案することもできます。中学校柔道振興協議会はそんな想いで組織されました。柔道を始めた年齢(資料提供:富山県柔連)⃝47都道府県代表による協議⃝全国9ブロックの代表による協議⃝都道府県単位での活動全国協議会 9ブロック代表者会 都道府県協議会▲今年8月21日、全国中学校大会(長野)の際に中学校柔道振興協議会を開催18まいんど vol.42活動内容○全国実態調査⃝各地の地域移行状況を把握⃝課題の明確化○課題解決、相互研修⃝先進事例の共有⃝解決策、支援策の検討⃝指導改善に向けた相互研修○関係機関との連携⃝スポーツ庁、都道府県、自治体⃝日本中体連、全国高体連⃝全日本中学校校長会、日本PTA全国協議会組織(模式図)

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