――監督を続投する思いは?――パリオリンピックでは、選手が力を十分に出し切れなかった?――パリまでの3年間とこれからロスまでの4年間。取り組み方も変わる?――コーチ陣について。――どんな日本代表チームにしたい?――初の女性代表監督、引き受けるにあたって感じられたこと、思いを。――最終的に決断したのはどういう経緯?――不安はありませんでしたか?――リオ、東京のオリンピック2大会で強化コーチを経験しています。強化コーチ、監督のやるべきこととは?――選手の所属との関係構築は非常に重要かつ、難しいところですね。――コーチの選出の基準は?――コーチ陣をどうリードしていく?――チームジャパンを作っていくにあたって大切なことは?「東京オリンピックからパリオリンピックまでの3年間、選手やコーチ、スタッフと時間をともにするなかで、人との信頼関係がすごく重要だなと改めて感じました。やっぱりお互いに頼って頼られてという形でしかチームというのは作っていけないなと。そのなかで、リーダーというのは絶対に重要ですけれども、同時に選手とコミュニケーションをとれるコーチや選手に頼られるスタッフというのがすごく重要だという思いを持ちました。今からさらに4年間、同じ境遇で、同じ形で、同じ思いでできるか。私は44歳なのですが、44歳から4年、20代の選手としっかりコミュニケーションをとり信頼関係を持続できるのかという不安もありました。ですけど、自分自身、団体戦も銀メダルということで、やっぱり悔しいんですよね。個人戦に関しても、この選手は金メダル獲れたよな、獲らせてあげたかったなと。そういう悔しさ、無念さは同じ舞台でしか晴らせないという思いもあって、今回お話をいただき、もう一回やらせてくださいということで、お受けしました」「私たちが勝たせてあげられなかったというんですかね。選手は持てる力を全部出して戦ってくれました。でも、勝負の世界は実力だけじゃなくて、運やタイミングといったものもあると思うんです。すべてが合致するのは非常に難しいことで、明確な答えもない。では何をすればよかったのか、僕自身も答えは出ていないのですが、でも金メダルを獲れる実力のある選手はいましたので、そういった意味では悔しい思いをさせてしまったと思いますし、私自身も悔しい思いをしました」「例えば、東京オリンピック後のGS東京はすでにパリオリンピック代表選考が始まっている流れになっていました。選考期間ではなくても絞り込む準備をするのが3年前なんですね。でも、今回は4年前なので、視野を広げ、可能性のある若手を見出すことができる。先日の講道館杯もそうですけど、そういった選手の可能性を摘まなくて済むのかなと。挑戦の場を多く作りたいですし、選手の海外派遣に関しても、有望な選手、期待できる選手をできるだけ国際大会に派遣することが、今だからできることだと思いますし、積極的に行う必要があると思っています」「秋本啓之先生、小野卓志先生、百瀬優先生は代わりなく、海老沼匡先生に古根川実先生と入れ替わりで入っていただきました。大きな特徴としては全員が動けるコーチで、選手の打込を実際に受け、選手と組み合うことができることです。組み合うことで良い点、悪い点の発見もありますし、打込や乱取を通して得られる信頼関係もあると思います」「東京オリンピックの時の所信表明は『明るく楽しく生き生きと』で、選手にはエネルギッシュであってほしいと言いましたが、それは今回も変わりません。いつも元気だな、やる気がみなぎっているなと、そういう選手であってほしい。日本代表ですから、子どもたちの憧れの選手であってほしいし、そういう選手を目指してほしいと思っています」「最初にお話しをいただいた時は、認めていただいたことに対して嬉しい気持ちでした。同時に、チームを抱えている状況ですので、所属との折り合いをどうするか、自分の感情と現実的な状況を合わせて考え、果たして可能なのかどうかと揺れ動いた感じです」「『その気持ちがあるのなら頑張ってみなさい、大学としても協力する』と所属の東海大が背中を押してくれたので、それであればお受けしようと」「どこまでやれるのかというのはありましたが、全日本の監督というのはまったく未知の領域なので、不安を感じるところまでたどり着いてないというのが現状です」「当然ですが選手たちをどれだけサポートできるかということだと思っています。リオや東京では、コーチとして、強化委員長や副委員長、監督の先生方とともに、所属の先生方にも協力していただき選手をサポートしました。やはりバランスは絶対に必要であり、それがいわゆるチーム力なのかなと思ったので、「最近、いろいろと考えるのですが、やはりバランスを取りながら選手の環境を整えていくことが大切だと思っています」「全日本の仕事というのは本当に限定的なもので、所属チームに選手を抱えてもらっているというのが大前提にあります。なので、コーチにもそこを理解したうえで、自分たちに何ができるかを考えてほしい。正直、それが一番大事なところだと思っています」「海外を相手に活動するうえで、スタッフが受け身では情報収集も十分にできないと思いますし、実際に海外に出た時も、選手を引っ張っていけないと思うので、まずは海外経験があること。そして対選手、対スタッフ、対所属においてしっかりコミュニケーションがとれること、コミュニケーション能力が高い人。あとは、世界レベルの技術を的確に理解しアドバイスできる技術力があること。その3つを軸に考えて選出させてもらいました。私はこのコーチ陣とともに、結果を出すのが役目であり、スタッフが力を出せる環境を作ることが務めだと思いますので、改めて身が引き締まる思いです。あと、今回の人選において一番重要なことは、全員が女子柔道に関わっている、女子柔道の指導経験があることで、これは外せなかったポイントです」「まずは、常に私がどう考えているのかを伝え、そのうえで、どうしてほしいかを伝える。そして、それが現実的なのかそうじゃないのか、コーチの意見を聞きながら、できない場合は、代わりにどうしたらいいのかを考えていきたいと思っています」最終的には『自他共栄』の精神なのかなと。ただ言葉として言っているだけでなく、それを体現していく、そんなチームジャパンにしたいと思っています」男子監督 鈴木桂治1980年6月3日生(44歳)、茨城県出身。2021年9月より日本代表男子監督を務め、今年10月に再任。国士舘大学教授女子監督 塚田真希1982年1月5日生(42歳)、茨城県出身。2016年より東海大女子柔道部監督。2013年より全日本女子特別コーチ、リオデジャネイロ、東京とオリンピック2大会で代表コーチを務める。東海大学准教授男女代表監督 INTERVIEW11まいんど vol.422028年ロスオリンピックに向けて強化新体制スタート!
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