「大きな声で挨拶と返事をしよう」「人の嫌がることをしない、言わない」「来た時よりも美しくしよう」「みんなで楽しく柔道をしよう」。地元の道場での柔道教室では毎回稽古終わりに4つの約束を私が唱え、子どもたちと指導者が復唱し、道場に元気な声が響きます。保護者の方々には、「4つの約束を普段の生活でも実践させてください」とお願いしています。一方で、自分は実践できているのか、人の嫌がることを言ったりしたりしていないかと自問自答することが度々あります。人にメッセージを伝える時には責任を持たねばなりません。柔道選手や愛好家が安全に柔道に取り組み、力を発揮できるよう医科学委員会はさまざまな情報を発信し、サポートをしています。具体的には、医学的視点に立った研究・啓発活動、大会の救護活動と適切な救護方法の普及、全日本強化チームのサポート、アンチ・ドーピングなどに携わっています。情報発信には正確な医学的情報の反映が求められており、先の子どもたちへの訓話とは重さが違いますが、責任を負うことには違いがありません。ナウイルス感染症への対応です。社会が混乱するなかで、相手と密着し対峙する柔道をどうしたら安全に行えるのか、委員会で真剣な議論を重ねてガイドラインを策定しました。当時、コロナ対策を任されることになり、まず自分の道場で畳消毒の方法を考案し、段階別の練習を実践したうえで動画にまとめて啓発に努めました。また、全柔連が主催・関係する大会の開催の是非、参加基準などについて医学的な意見を求められました。こちらの意見や発信する情報に対し、「厳しすぎる」「現場を知らなさすぎる」「選手の気持ちが判らないのか」との意見をいただくことや、新聞などで批判的に報道されることがありました。私は大学病院に勤務しています。急速に呼吸困難となって次々と病院に搬送される患者さんに防護具をつけて治療にあたり、ご家族とも接していました。自分の道場の中高生がインターハイや全中への出場が絶たれ、思うところはありましたが、医療の現場を見ているからこそ医学的に正しい判断に従近年の活動のなかで最も印象深いのは新型コロった情報を発信しないと医科学委員会が存在する意味がなくなると考えていました。医科学委員会は、医師だけでなく柔道整復師、アスレティックトレーナー(理学療法士)、大学教員、柔道指導者などで構成されています。ほぼ全員が柔道経験者で柔道が大好きです。診療等で忙しいなか、柔道界のために貢献したいと時間を作って活動に携わってくれています。今後も柔道による怪我を減らし、柔道が身体機能の向上や維持に資するものであり続けられるよう、長期育成指針で示されたアントラージュとして責任をもって活動してまいります。私自身は小学2年生から柔道を続けてきました。 滋賀県で安全指導と大会での救護を任せていただき、地元では柔道連盟を運営し、少年柔道初心者の指導、昇級審査や形講習会の主催、会員の全柔連登録作業、中学校部活の地域移行にも関わらせていただいております。医科学委員会での活動に限らず、個人としてもアントラージュとして末永く柔道に関わっていきたいと考えています。 6 14 173まいんど vol.41公益財団法人全日本柔道連盟医科学委員会 委員長三上靖夫Contents特集PARIS 2024日本代表、戦い抜いたパリ・オリンピック8日間監督&選手帰国会見 4日本代表8日間の熱戦譜 パリ・パラリンピック日本代表に聞く 特集楽しんで強くなろう!JSPO-ACP@柔道場のススメ 連載普及の広場 22やわら通信 24やわらたちのセカンドキャリア 26伝統を歩く 28L’Esprit du Judoコラボ企画 30海外「JUDO」ホントのところ 32柔道ゼミナール~メディカル編 34柔道ゼミナール~栄養&レシピ編 36登録係からのお知らせ 39委員会インフォメーション 40FROM事務局 462024.8 Vol.41医科学委員会が果たすべき責任アントラージュとして
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