まいんど vol.41 全日本柔道連盟
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受傷時の対応応急手当と大会救護 gaigne)骨折痛:骨折線①Rest③Compression(圧迫)-患部の圧迫④Elevation(挙上)-患部の挙上損傷72・7件/1000人/年、脱臼16・0件/1000人/年であり、柔道の中学生と比べても骨折の頻度は下がりますが、受傷頻度が多いのがわかります。高校生全部活登録生徒数110万6272名の平均の受傷率では、外傷全体91・9件/1000人/年、骨折25・8件/1000人/年、捻挫・靱帯損傷32・7件/1000人/年、脱臼3・8件/1000人/年と高校生も中学生より受傷頻度が高くなっていることがわかります。このように、柔道ではかなりの高頻度でケガをすることになり、日常の練習において指導者や保護者が、また試合においては救護担当が遭遇することが多くなります。これらのなかには捻挫と思っていても骨折していたり、脱臼と思って整復したら実は骨折だったというような事例がみられます。【症例1】中学生の時に手をついて保存的に加療。レントゲンはとっていない。内側上顆の偽関節であった(図1)。【症例2】高校生の時に足関節捻挫をしたがレントゲンはとっていない。内踝の偽関節である(図2)。骨折や脱臼は特徴的な症状があるので、以下に示す症状がある場合は病院での診断を受けましょう。骨折の一般的症状①自発痛、限局性圧痛と介達痛(軸圧痛、叩打・牽引痛)マルゲーヌ(Malに一致した圧痛。②軋轢音(あつれきおん)③転位と変形(骨による支持性の消失)や異常可動性④皮下出血・腫脹脱臼の一般的症状①自発痛、限局性圧痛②弾発性固定(弾発性抵抗)③転位と変形や異常可動性④皮下出血・腫脹これらは変形や腫れ、痛みが強く出る場合がありますが、骨折していても変形がない場合や動かさなければ痛くない場合もあります。また成長期では骨端線がまだ閉鎖していないので、骨端線に起こる外傷、裂離骨折が多いので必ずレントゲンにて確認しましょう。(連載39号をご参照ください)。なお、脱臼と思っていても骨折による変形であったり、転位のない(レントゲンでずれていない)骨折または骨単線離開があり得ますので、痛みなどの症状が続く場合は、再度病院で確認してもらうようにしましょう。捻挫や打撲などにより靭帯損傷や筋・腱⃝ 気管支喘息発作やアナフィラキシー(アIce(アイシング:冷却)-患部の冷却損傷、に対してはRICEという処置を行う。RICE処置を損傷直後に適切に行うことで、治癒を早め競技への復帰を早めることができます。ただし、前述のように病院で診断治療を受けることが重要です。(安静)-運動の停止骨折や脱臼が疑われる時は病院での診察や治療を受けるまでの間の応急手当として患部を固定する必要があります。基本的には損傷部位をはさんで近位と遠位の2関節を固定します。上肢の場合、肘より遠位の損傷が疑われる時は手関節を固定し、三角巾などで吊った上で上腕(肘から肩まで)を体幹に固定します。下肢の場合は、足関節、膝関節を固定するが、大腿部の損傷がある場合は股関節まで固定しましょう。固定は、損傷部位の体に近いほうからタオルや包帯で4か所行います。この順番を間違えると、骨折していた場合などに変形を強め痛みが増すことがあります。副木がない場合は板や棒、ダンボールをまとめたり、傘も固定に使えます。応急手当とは、突然のケガや病気に対して病院で診断・治療を受けるまでの間に行う手当のことをいいます。運動中や、不慮の事故等で起こった骨折やケガによる出血への対応や病気による発作(心肺停止でない)への対応を行うことです。この応急手当の種類にはレルギー)、低血糖等に対するもの⃝ けいれんや失神、熱中症や低体温等に対⃝ 創(外出血)に対する直接圧迫止血法やするもの捻挫、打撲、骨折等に対するRICE処置や固定などがあります。柔道で多い骨折や脱臼をした時の対応として、整復操作は応急手当てに入るのでしょうか? 医療法では〝医行為の行われる場所は病院、診療所などに限られる〟と定められています。また医師法第17条で、日本の医師免許を取得しているものでなければ医業(専門的知識・技術を持たなければ人体に危害を及ぼす可能性のある医行為を反復継続する意思を持って行うこと)をしてはならないと定められています。ここで問題となるのが医行為の範囲ですが,心肺蘇生を行う救命処置はもちろん、最近では血圧・体温などの測定、専門的な知識・技術を要しない軽微な外傷処置などが医行為に含まれないと言われています。では、医師であれば医行為を試合会場などで行っていいのでしょうか? けないのでしょうか? に、医療法では〝医行為の行われる場所は病院、診療所などに限られる〟とされており義務ではありませんが、医行為を行う医師の責任で本人または保護者の同意のもとに行うことは否定されてはいません。しかしながら、医行為の遂行にあたっては相当な注意を用いなかったことに起因して身体に主害を与えた場合に医師の賠償責任を取られることがありますので、自らまたは大会運営側が賠償責任保険に入ることも必要です。また行わなければい先ほど述べたよう35まいんど vol.41        ②  図1図2

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