まいんど vol.41 全日本柔道連盟
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柔道JUDO中学生、高校生のケガの実態四肢の外傷の特徴と注意点メディカル編ゼミナール外傷とは外力によって身体の一部に生じた障害を指し、骨折や脱臼、捻挫や靱帯損傷、打撲や皮膚の創そ(開放創)も含まれます。柔道によるものは皮膚の創が生じることはまれで、多くは骨や筋肉、靱帯など皮下の運動器の損傷です。中学生、高校生においては、独立行政法人日本スポーツ振興センターが発行する「学校等の管理下の災害」を見るとケガの実態がわかります。令和4年度では、柔道の部活動(中学)の全外傷2800件が報告され、その内訳は骨折41・9%(1172件)捻挫・靭帯損傷29・5%(825件)、脱臼3・5%(97件)となっています。同じ中学生のすべての部活と比較すると全外傷10万2867件の内訳は、骨折35・4%(3万6390件)捻挫・靭帯損傷33・3%(3万4223件)、脱臼2・2%(2281件)となり、骨折の割合がやや多いことがわかります。しかしながら、この数字では、ケガが多いかどうかがわからないため、令和4年度(公財)日本中学校体育連盟加盟校・加盟生徒数調査集計表から、登録者を抜粋し頻度を見てみると、柔道の登録生徒数2万6386名(男子1万7815、女子8571)の受傷率は外傷全体106・1件/1000人/年、骨折44・4件/1000人/年、捻挫・靱帯損傷31・3件/1000人/年、脱臼3・7件/1000人/年となります。他の競技と比較するため、陸上やバスケットボール、バレーボールなど全国中学校体育大会が行われる16競技(夏期大会のみ)生徒数324万4806名の平均の受傷率では、外傷全体31・1件/1000人/年、骨折11・0件/1000人/年、捻挫・靱帯損傷10・4件/1000人/年、脱臼0・7件/1000人/年であり、柔道ではすべてのケガにおいて高い水準です。柔道の部活動(高校)では平成4年度で全外傷2601件が報告され、その内訳は骨折20・8%(542件)、捻挫・靭帯損傷41・0%(1067件)、脱臼8・9%(234件)となっています。柔道の部活動(中学)と比較すると骨折の割合が少なくなり、捻挫・靱帯損傷、脱臼の割合が増えてきます。高校生のすべての部活では全外傷10万1684件の内訳が骨折28・1%(2万8539件)、捻挫・靭帯損傷%(4194件)となり柔道と同じように骨折の割合が少なくなり、捻挫・靱帯損傷、脱臼の割合が増えています。このことは、体の成長による骨強度が増したことに加え、運動強度が増え関節に負荷がかかることを示しています。中学生と同様に高校生におけるケガの頻度を、令和4年度(公財)全国高等学校体育連盟加盟・登録状況から見てみましょう。高校の柔道の登録生徒数1万4673名(男子1万1247名女子3426名)外傷全体177・3件/1000人折36・9件/1000人/年、捻挫・靱帯 / う   年、骨このコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。多くの大会参加や日々の活動が日常となり、それにつれてケガの発生も増えています。2020―2021年にはなかった柔道事故も2022年以降増加し、頸椎損傷や頭部外傷による重大事故の報告も増えてきています。これらの重大事故だけでなく、骨折や脱臼、靱帯断裂なども増えており、治療のために生活に支障が出たり運動ができなくなることも多くなります。今回は、特に手足(四肢)に多い外傷の特徴と注意点、そして大会の救護や日常のケガの対応を行う方へ、気を付けていただきたいことを述べさせていただきます。34解説:宮崎誠司東海大学スポーツ医科学研究所 所長PROFILE東海大学スポーツ医科学研究所所長。日本整形外科学会専門医・スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツ医。現在、全柔連医科学委員会副委員長で、96年から08年までナショナルチームドクターを務めた。まいんど vol.4135・5%(3万6117件)、脱臼4・1表2:外傷の発生頻度中学生高校生中学生高校生外傷の種類別割合(%)骨折41.935.420.828.1柔道スポーツ全般柔道スポーツ全般表1:外傷の種類別割合(%)外傷の発生頻度 (件/1000人/年)外傷全体106.131.1177.391.9骨折44.411.036.925.8柔道スポーツ全般柔道スポーツ全般捻挫・靭帯損傷29.533.341.035.5脱臼3.52.28.94.1捻挫・靭帯損傷31.310.472.732.7脱臼3.70.716.03.8指導者のスキルアップのための

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