まいんど vol.41 全日本柔道連盟
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30回目▲写真1 学術会議に参加したEJU副会長アシュワンデン氏(右から2人目)と著者(中央)▲写真2 参加者の車椅子▲写真3 抑え込みの攻防の指導の様子(足が不自由な柔道家は靴下をはいたままで参加する)▲写真5 座ったまま組み方の練習をする参加者の様子◀写真4 後ろ受け身を行う参加者の様子 教育普及・MIND委員会では、日本の柔道教育普及活動をより充実させるために、各国連盟の協力のもと、世界の柔道最新事情や取り組みについての調査・報告をしております。今回は2024年6月10日~24日にかけてクロアチアのポレチ市で開かれた欧州柔道連盟主催の柔道フェスティバルの視察を中心に、欧州柔道連盟の生涯柔道の普及に対する取り組みを紹介します。 今年で9回目となるEJU(欧州柔道連盟:EJU) Judo Festivalは、柔道に携わるさまざまな人を対象とした国際的なイベントだ(1回目は2014年トルコ・アンタルヤ市開催)。日本の代表選手も参加した強化選手向けのオリンピックトレーニングキャンプ、15歳以下の子どもが家族と参加できる”Kids and Family Camp”(キッズとファミリーキャンプ)、障がいがある柔道家向けの”Adapted Judo Camp”(アダプテッド柔道キャンプ)の他に、強化柔道、少年柔道の指導法、柔道の教育理論等の柔道に関連する学術研究及び指導法が幅広く紹介された学術会議が開かれた。 今回特に注目したのは「アダプテッド柔道キャンプ」だ。アダプテッド柔道の「アダプテッド」は「適応する」意味で、一人ひとりに合わせた柔道を意味する。つまり、年齢や性別、障がいの有無に関わらず、誰でも参加できる柔道のことだ。アダプテッド柔道プロジェクトはEJUの教育委員会に設置され、Marina Draskovic氏及びスペシャルニーズ柔道の専門家であるTomas Rundquist氏及びTycho van der Werff氏を中心に活躍している。 アダプテッド柔道キャンプにはクロアチア、ハンガリー、スロベニア、スロバキア等より知的障がい、自閉症スペクトラム障がい、身体障がいがある柔道家約50人が参加した。教育普及・MIND委員会 教育普及部会 文/マーヤ・ソリドーワル(津田塾大学 准教授) 初日の練習会では参加者は座ったままでもできる後ろ受け身や抑え込みの攻防を行ったが、指導者が細かい技術を教えるよりも、むしろ全員が交流しながら楽しく参加できる雰囲気を作ることを優先したプログラムであった。  2日目はキッズとファミリーキャンプの参加者との共同練習が行われたが、スペシャルニーズ柔道の専門家のRundquist氏とVan der Werff氏に加えてEJU教育委員会「Judo for Child ren」の担当者Nuno Delgato氏も指導にあたった。参加者全員が、障がいの有無に関わらず2列に分かれて向き合って座り、お互いに楽しみながら後ろ受け身を行うようなプログラムは特に強く印象に残った。その後は、身体能力やレベルにあわせて3つのグループに分けて練習を行い、指導者3人がローテーションし、指導内容を工夫しながら各グループの指導を行った。 指導にあたったRundquist氏は「アダプテッド柔道とは、障がいがある柔道家に限らず、健常者も含めて一人ひとりの柔道家に応じたアプローチをするべきだ」と述べた。 練習の最後に、Van der Werff氏は参加者に柔道の礼を以下のように伝えた。「I take care of you, you take care of me, we take care of each other(私はあなたを大切にする、あなたは私を大切にする、そして私たちはお互いを大切にする)」。まさにアダプテッド柔道の根底となる考え方だ。日本では、未だ全員が同じ道場で柔道を行える環境も方法も整っていないのが事実だ。今後、柔道がさらなる価値を見出すためには、相手を大切にしあうアダプテッド柔道の考え方は重要である。私たちは、お互いを大切にする~ヨーロッパ柔道連盟のアダプテット柔道~

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