まいんど vol.40 全日本柔道連盟
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2.はしか(麻しん)3.トコジラミ麻しんは、麻しんウイルスの感染により引き起こされる急性感染症であり、主な症状は発熱、発疹、咳や鼻水、くしゃみなどの風邪のような症状です。麻しんは「感染症法」で5類に分類されています。麻しんウイルスに特化した抗ウイルス薬はありません。しかしながら、ワクチンを接種した人95%以上が免疫を獲得できるとされています。日本では、1978年にワクチンの定期接種が始まりましたが2008年に成人の大流行(年間に10000人以上が感染)したこともあり、現在は定期接種(法律に基づいて行う)が行われるようになりました。2015年にWHOから麻しんの排除認定を受け、それ以降は海外からのウイルスの持ち込みによる感染が主体となっていました。新型コロナウイルスの流行直前には年間600人以上の報告がありましたが、2020年から2023年の入国制限を行っている間には、感染はほとんど見られていません。2024年に入り1か月に10人以上のペースで感染が報告され、特に海外渡航歴のある人からの報告や、感染者と同じ空間にいた人が発症するケースが報告されるようになってきました。麻しんの流行が、ワクチン先進国であった欧米での報告も急増しているため、日本国内での感染が懸念されています。麻しんウイルスの感染力は極めて強く、インフルエンザの10倍以上と言われています。感染経路としては、飛沫感染、接触感染のみならず空気感染で広がります。免疫を持っていない人は、同じ空間にいれば必ず感染すると言われるほどの感染力と言われています。また麻しんウイルスは免疫細胞にも感染するため、ウイルスは感染者の免疫機能を抑制し、脳症やさまざまな臓器に合併症を引き起こします。麻しんウイルスに感染すると、まず高熱が出現します。その後10日程で鼻水、咳、結膜の発赤、涙目、頬部内側の小さな白色斑が見られます。数日後に、発疹が通常は顔面と上頚部に出現します。発疹は3日間以上続いて拡大し、ときに手や足にも達します。発疹は5から6日間続きますが消退していきます。主な症状は発熱、咳、鼻汁、結膜充血、発疹などですが、まれに肺炎や脳炎になることがあり、先進国であっても、患者1000人に1人が死亡するとされています。日本では、小児期に2回の予防接種が行われ、風しんとの混合ワクチン(MR)が用いられています。海外へ渡航予定の人で、麻しんにかかったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方など麻しんへの免疫が不十分な方は、予防接種を検討してください。予防接種を受けているかどうかは母子手帳などで確認をお願いします。過去にワクチン接種をしていない方や、血液検査で抗体価が低い方を対象に費用助成を行っている自治体などもあります。ただし、有効性が基準を下回っていたという理由で製薬会社が自主回収をしているため、接種が行えない場合があります。希望する場合は医療機関に問い合わせを行ってください。トコジラミは、戦後しばらくよく見られ        る相談が増えています。体長はダニ(0・た南京虫とも呼ばれる害虫です。生活環境の改善や殺虫剤の使用により、被害は減少していましたが、各地でトコジラミに関す1~1ミリ)より大きい、約5~8ミリの大きさです。夜間、特に深夜に行動し、押し入れ、じゅうたんや畳のヘリのすき間、ふすまや障子の隅のつなぎ目部分、ソファの座面と背もたれの間のすき間、ソファの脚との継ぎ目の部分、マットレスや布団・枕の中に生息しています。吸血性で、暗い時間や場所で人々の手足や首などの露出部分を刺して血を吸います。その結果、強いかゆみや発赤を伴う皮膚症状が現れます。一度家に持ち込むと駆除が難しく、繁殖力も強いため注意が必要です。海外では、フランスで大量に発生したこともあり、人の移動により広まっていると考えられます。日本でも新型コロナウイルスの水際対策で、海外からの観光客や国内の旅行者が減るにつれて、トコジラミの拡大も見られなくなっていましたが、2023年の秋頃から再び大勢の人が行き来することにより、荷物に紛れ込んだトコジラミが渡航者によって運ばれ、今後は、さらに広がっていくと考えられています。トンスランス感染による皮疹とも似ているため、適切な対処が遅れる場合があります。最近では、殺虫剤への耐性があるトコジラミも増えていると言われているため、対処は専門の業者にお願いすることも必要です。海外へ渡航する機会や海外からの渡航者も増え、これまで抑えられた感染症に罹患する可能性が増加します。予防や対策をよく理解し、健康を害さないように注意しましょう。43まいんど vol.40図3 国内の麻しん報告数図5 トコジラミの生息しやすい場所東京都保健医療局リーフレットより引用図4トコジラミの成虫

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