まいんど vol.40 全日本柔道連盟
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メディカル編ゼミナール柔道JUDO新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後に注意すべき感染症について1.結核いま知っておきたい、注意すべき感染症2023年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行された後も新型コロナウイルスの感染は続いており、季節性インフルエンザも例年より長い期間流行していました(図1)。日本でも新型コロナウイルスに対する水際対策として外国からの入国を制限したため、2018年3月には257万人、2019年3月に275万人いた外国人入国者が、2021年3月には2万人弱となりました。しかし、水際措置終了後約1年経った2024年3月には1か月で300万人を超える人が入国しています。この人の移動に伴い、これまで国内で非常に低く抑えられていた感染症の増加に注意が必要になります。増加傾向にある3つの感染症について説明します。結核とは、結核菌に感染することによっ    て発症する病気です。「感染症法」では第2類に分類されます。結核は致死率が高く、感染症の中では新型コロナウイルスに次いで世界で2番目に死亡数の多い感染症です。結核菌は空気感染で広がります。感染力を示す基本再生産数は地域によっても異なると言われますが、平均するとインフルエンザや新型コロナウイルスよりやや高いと言われています。結核菌は、主に肺に感染し定着して症状を引き起こすことが多いので、咳や痰などが主要症状として知られていますが、肺だけでなく全身に広がることがあります。自然治癒が難しいものの、抗生物質により治癒できますが、最近は薬剤耐性菌の増加が問題となっています。世界保健機関(WHO)によると全世界の結核患者は2022年には1060万人と推察され、増加傾向にあると言われています。国内の結核患者の新規登録数は2000年の約4万人だったのに対し2022年では1万人程度に減少しています。10万人当たりの罹患率は世界平均が100・0人に対し日本は8・2人と低い水準です。しかしながら、厚生労働省結核登録者情報調査によると、近年、わが国の年間届け出結核患者における外国生まれの人の占める割合は増加傾向にあり、特にアジア圏からの入国者に多いことが分かっています(図2)。2023年以降はまだ数が公表されていませんが、来日する数が増えるにしたがって増加する懸念があります。このコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。新型コロナウイルスが5類感染症になって約1年が経ちましたが、いまなお、新型コロナウイルスの感染は続いています。その後に流行った季節性インフルエンザは落ち着いてきましたが、いま増加傾向にある感染症があることをご存じでしょうか。今回は、いま注意すべき感染症について説明します。図1 新型コロナウイルス感染症定点当たり報告数(全国)推移(4月26日発出 厚生労働省Press Release『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について』より引用)解説:宮崎誠司東海大学スポーツ医科学研究所 所長PROFILE東海大学スポーツ医科学研究所所長。日本整形外科学会専門医・スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツ医。現在、全柔連医科学委員会副委員長で、96年から08年までナショナルチームドクターを務めた。42まいんど vol.40図2 日本における結核新規登録者のうち外国籍の人の割合指導者のスキルアップのための

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