まいんど vol.40 全日本柔道連盟
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事故は注意を怠ると発生します。この委員会の業務は地味で地道なものばかりですが、毎年同じ事業を重ね、注意喚起を繰り返すことは何より大切ですし、終わりがありません。同時に、時代に合わせた新しい取り組みも模索されています。当会では、一つ一つの事故事例についてもっと踏み込んだ調査をと、願っています。100人の子どもが柔道を学んでいたら、100通りの目標があるはずです。それを忘れないでいてください。最高峰を目指す子ばかりでなく、楽しく長く、できれば生涯続けたいと考える子もいます。安全に柔道を学ぶ喜びを知った子が、お父さんやお母さんになって、その子どもにまた柔道をやらせたら、おのずと日本の柔道界のすそ野が広がり、いい選手も生まれてくるはずです。日本スポーツ振興センターのデータによると、1983年から2011年までの29年間に学校管理下の柔道の部活動や授業において118名の死亡事故がありました。年間約4名の中高生が亡くなっていたことになります。その頃、私も高校で柔道の授業や柔道部の顧問をやっていましたが、このような実態があることも知らず重大事故は他人事のように考えていました。多くの指導者が同様の認識だったのではないでしょうか。ところが2012年から始まった中学校の武道必修化により、柔道事故の実態が社会問題としてクローズアップされようになりました。これを受けて全柔連では2014年に専門委員会として重大事故総合対策委員会が組織され、重大事故防止の啓発活動が本格的に開始されました。全国柔道事故被害者の会代表との協議会、事故防止・安全指導資料の作成、事故防止啓発文の発出や安全指導講習会等が実施されました。創設期の活動は重大事故の実態や事故原因の解明など、事故防止や安全指導に対する共通認識の形成に重点が置かれ、それによって柔道界全体の危機意識が高まり重大事故は減少しました。より委員長を引き継ぎました。当時の課題は、事故防止や安全指導に対する共通認識に地域格差があること、事故情報や事故防止の留意点がタイムリーに伝わらないこと、重大事故はいつ、どこでも、誰にでも起こるとの認識に指導者による温度差があることでした。また、小学生の重大事故が続き、少年期の重大事故防止が喫緊の課題でした。近年はコロナ禍を経て頭部、頚部の重大事故の割合が高くなるなど、新たな課題への対応も求めら        れています。乗車時のシートベルトのように、いま、ここ、自分事としての重大事故防止を推進するため、以下の事業に取り組んでいます。「事故速報」の配信。「全国安全指導員連絡会」の開催。「柔道の安全指導冊子」、「危険な場面映像資料」、「安全講習資料」等の作成と改訂。「安全指導講習会実施報告」の集約と分析。特に自分事の認識を高めるために被害者の会と連携して事故当時者の声を伝える取り組みを重視しています。2018年に野瀬清喜先生(元全柔連副会長)こうした課題や現状を踏まえ、本委員会では、以下に、被害者の会代表の倉田久子様の言葉を紹介します。この言葉は全柔連長期育成指針とも重なるものです。委員会創設10年の節目に、改めて「重大事故ゼロ」の実現に向けて地道な事業及び活動を継続していく所存です。  4 14 20 24 303まいんど vol.40公益財団法人全日本柔道連盟重大事故総合対策委員会 委員長磯村元信Contents直前特集PARIS 2024パリ・オリンピック日本代表に聞く 特集①2024アブダビ世界選手権大会 連載特集 Vol.04(最終回)全日本柔道連盟長期育成指針 REPORT全日本選手権大会、皇后盃全日本選抜体重別選手権大会 特集②全柔連普及促進事業ステージ別マッピング 連載やわら通信 32やわらたちのセカンドキャリア 34やわら通信特別版 36L’Esprit du Judoコラボ企画 38海外「JUDO」ホントのところ 40普及の広場 41柔道ゼミナール~メディカル編 42柔道ゼミナール~栄養&レシピ編 44公認指導者賠償責任保険制度のお知らせ 47登録係からのお知らせ 48委員会インフォメーション 49FROM事務局 542024.6 Vol.40いま・ここ・自分事としての重大事故防止

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