まいんど vol.40 全日本柔道連盟
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■Sさんからの質問Q1:長期育成指針の具体的な内容は何ですか?Q2:柔道人口減少はなぜ問題なの?■廣川先生からの質問Q3:革新的なパスウェイとは? そのメリットは何か?Q4:早期専門化と勝利至上主義の問題点は何ですか?Q5:複数のステージを設けた理由は何ですか?1・発達段階に合わせた育成2・スポーツへの継続的な参加の促進時的に、その物差しでは評価される可能性はありますが、物差しが変った途端に、何もできなくなります。このたとえ話でいうと、この指針は化粧の仕方を習得していただくことを目指します(身体リテラシーの涵養)。そうすれば、あなたが好きになった男性の好みにも合わせることもできますし、流行りの「美しい」に合わせることもできます。物差しは一つではないですよね。ここでは、わかりやすく伝えるためにたとえ話で説明しましたが、注意が必要です。このたとえ話は外発的な意欲です。この指針では、内発的な意欲である「個人としての成長」や「社会への貢献」などが非常に大事になります。細かい話になってしまいますが…。ありますよね。少年少女に読んでもらうための哲学書の入門書のようなものです。これは、世界で一番やさしい哲学の本と言われるものですが、この本をさらにわかりやすく伝えるための解説書が出ています。これを参考にしてみてはどうでしょうか。小山勝弘先生や石井先生もできる限り文字数を減らし、わかりやすく工夫されたとは思いますが、さらに量を減らして、わかりやすい解説書のようなものを作成できるとよいと思いました。て、わかりやすく伝えられるものを作成していきたいと思います。それでは、お二人からの質問をお願いします。****************廣川 「ソフィーの世界」という著書が石井 ありがとうございます。参考にし長期育成指針は、柔道を始める幼少期からシニア期までの各ライフステージで必要な支援と指導を定めるものです。それぞれのライフステージで起こりやすい問題を解決できるように記載されています。この指針には、技術の向上のみならず、心身の健康促進や社会性の育成も含まれます。特に若年層には、柔道(攻撃防護)の楽しさを知ってもらい、継続して参加してもらうことを目指し、年齢や発達段階に応じた指導法を推奨しています。さらに、柔道で学習したことを社会に応用できるようにすることを目指しています。柔道は、身体性を伴う日本の伝統文化であり、身体教育としての価値は極めて高いと思います。柔道人口の減少は、その継承に直接影響します。若年層の減少は特に深刻で、柔道を通じた育成機会の減少や国際競技力の弱体化を招く恐れがあります。長期育成指針は、柔道の価値を再定義し、さまざまな年齢層に適したプログラムを提供することで、これらの問題に対処します。革新的なパスウェイとは、子どもたち         プローチのメリットは、才能ある選手をの才能を指導者の眼と科学的手法で識別し、計画的に育成するものです。このア見逃すことなく、システマティックに支援できる点にあります。第3回(まいんど39号)にも記載しましたが、柔道の文脈において考えると非常に深い意味を持ちます。社会貢献や社会の益になることは多様です。一つの物差しだけで評価することなく、すべての子どもたちの才能を見出し、成功の可能性を最大に高めることが求められると思います。この点を改善できれば、生涯を通じて養った精力(心身の活動力)を社会に有益な形で運用・発揮することができると信じています。早期専門化は、子どもたちが幅広いスポーツを経験することやさまざまな動作を経験する機会を奪います。勝利至上主義は、倫理的行動の欠如を招く可能性があり、早期専門化の問題と重なることで、子どもたちに過度のストレスがかかりメンタルヘルスに悪影響を与えるリスクがあります。また、報酬や強制を用いた指導によって内発的な動機付けの低下を招く可能性があります。子どもたちがスポーツや運動に対して持つべき「楽しさ」や達成感を損ね、結果として柔道人口の減少に繋がっています。これは、これまでの解説記事でも説明ができていないので、丁寧にお話ししたいと思います。複数のステージを設けた理由は、国民の多く、特に子どもたちの成長、発達、およびパフォーマンスの向上を段階的に支援するためです。この指針は、子どもたちが生涯を通じてスポーツや運動に参加し、最高・最適なパフォーマンスを達成するための枠組みを提供しています。以下に、その主な理由を整理します。私たちは、生涯を通じてさまざまな発達段階を経験します。各ステージは、身体的、心理的、認知的、社会的発達において異なるニーズを持ちます。この指針では、これらの発達段階に合わせたトレーニングや競技会のあり方などについて「体育」、「勝負」、「修心」の視点(嘉納師範の体系化した視点)に「環境」と「調和」を加えて提案し、個々人が持つポテンシャルを最大限に引き出すことを目指しています。この指針は、国民が幼少期から成人期、22まいんど vol.40

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