まいんど vol.39 全日本柔道連盟
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メディカル編ゼミナール柔道JUDO子ども(成長期まで)の骨の特徴とその時期に起こる骨の外傷子どもの骨格の特徴骨の成分子どもの骨組織と外傷の特徴子ども成長期までの骨の特性と外傷子どもの骨は、長軸方向にも(伸びる)、短軸方向にも(太くなる)成長するという特徴があります。長軸方向の成長は、骨端線(成長線)において内軟骨性骨化という成長軟骨組織が骨に置き換わることにより長くなります。また短軸方向の成長は骨の外側面における骨膜性の骨形成と、骨髄側における骨吸収により太くなります。子どもと大人の骨格の大きな違いは発育を生み出す骨端軟骨(いわゆる成長軟骨)の存在です。上腕骨や大腿骨など典型的な長管骨では骨幹中央の骨化に続いて骨端部に骨化中心(骨端核)が出現し、骨化が進行するにつれて骨幹中央の骨化部との隙間が狭くなっていきます。この隙間が骨端軟骨であり、隙間が消失したときが骨の長さの発育の終了となります。骨端軟骨の消失時期は部位により、骨により違いがあり、末側が早く、中枢側が遅いという特徴があります。骨盤や肩甲骨、鎖骨では20歳ごろまで骨端軟骨が残存します。この骨端(成長)線以外にも、ぶ厚い骨膜の存在や、骨自体に線維成分が多いため柔軟性に富むという特徴があります。また、骨は力学的な負荷の変化に対応できるように、骨を分解して新しく骨を形成する再構築が常に行われています。この過程をリモデリングといいますが、小児から成長期では、大人に比べてそのリモデリングが盛んです。骨の成長も、成長線での軟骨細胞の増殖から骨形成というこのリモデリングと同じ機構で成長していきます。骨は細胞以外の部分である細胞外基質と細胞成分でできています。細胞外基質は、1型コラーゲン主体の有機成分、カルシウムやリン主体の無機成分、水などで構成されます。骨組織は、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞⃝ 線維成分が多いため、硬度(骨密度)はの3種の細胞と硬い骨基質とからなります。骨芽細胞は、まず骨の表面でコラーゲン細線維をつくり、これが密集して類骨をつくります。続いて類骨の深いところからリン酸カルシウムのハイドロキシアパタイトが沈着して、硬いが弾力のある骨基質が形成されます。骨基質のコラーゲン細線維は骨層板をつくっていますが、その走行は層により異なります。骨層板のコラーゲン細線維の走行は、骨表面にかかる力の方向と関連してつくられます。このような骨化過程で、骨芽細胞の一部が骨基質に埋没して骨細胞へ移行します。小児(成長)期はこのリモデリング、骨形成が盛んで骨に線維成分が多くハイドロキシアパタイトの沈着が少ない骨が作られます。①骨そのものの特徴低いが柔軟性に富む(不全骨折・若木骨このコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。柔道は子どもから中高年まで、生涯にわたり行うことができますが、登録人口を見ても活動を行っているのは小児期から若年者が中心です。この時期には、特に骨を中心に大人とは異なる運動器の特徴があります。今回は、子ども(成長期まで)までの骨の特性から、この時期に起こりやすい外傷を見ていきましょう。解説:宮崎誠司東海大学スポーツ医科学研究所 所長PROFILE東海大学スポーツ医科学研究所所長。日本整形外科学会専門医・スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツ医。現在、全柔連医科学委員会副委員長で、96年から08年までナショナルチームドクターを務めた。36     ()まいんど vol.39▲図1:骨端軟骨指導者のスキルアップのための

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