まいんど vol.39 全日本柔道連盟
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なく、フェアプレイや相手への尊重、自己成長の方法を教育することの重要性が述べられています。競技成績だけでなく、選手として、そして人として成長する過程にも焦点を当てることで、より健全で持続可能な発展が期待できます。この機会に、講道館のウェブサイトにある「順道制勝とは」のページを読んでいただきたいと思いますが、一部引用します。 「柔道の技術は大切である。また貴重なものである。しかし、もし技術が単独に存在して智徳の修養に伴われていなかったならば、世人(世間の人々)はさほど柔道家を重んじないであろう。他の修養と離れた技術は、軽業師の技術と比較しうるものであって、特にとりたてて尊重する価値が認められまいと思う。柔道の修行者が、文武の両道にわたって研究練習を積んでこそ、はじめて国家社会に大いに貢献することも出来、世人から尊敬を受くることも出来るのである。」ここに柔道界における現状の問題点も   り、他国の長期育成モデルに「社会性」記載されていると思います。パフォーマンススポーツとしての柔道の技術力やスキルが世界一の水準に達していても、社会的な智徳が養われていなければ世間の人々は柔道家を重んじないし、尊重する価値が認められないのです。この問題は、世界中の多くのスポーツ界に共通しておが組み込まれている理由の一つです。嘉納は、この問題を早くから指摘していましたが、残念ながら日本の柔道界は、パフォーマンススポーツとしての柔道で培った技術やスキルを、社会に応用し、貢献するという軸への転換がうまく行われていませんでした。もし、この転換がうまく行われていれば、日本の柔道家は国際的にも模範とされていたでしょう。この点は極めて重要な課題として、長期育成指針の柔道を取り巻く課題で最初に取り上げています。スポーツの成功を柔道の成功に置き換えることで、柔道の革新的なパスウェイの概念は、より深みを増すと考えています。社会貢献の方法や社会の益になることは多様です。「柔道の成功における偶発的要素の最小化」を支える科学的根拠はまだ十分ではありませんが、子どもたちの能力を勝ち負けという単一の基準で評価することの不適切さは明白です。多様な評価基準に基づいて、すべての人の潜在能力を引き出し、彼ら/彼女らの成功の可能性を最大に高めることが求められます。柔道を通じて、生涯にわたる精力(心身の活動力)をよく養い、そしてその精力を社会に有益な形で運用することが重要です。これらを実現するには、柔道界全体が一致団結し、組織や団体間の対立を乗り越えて、協力し合う必要があります。多くの問題と課題が存在しますが、日本柔道は革新的なシステムの導入を進め、その副作用を克服し、より包括的で持続可能な発展を目指すべきです。この解説を通じて、長期育成指針のⅠからⅣ(パンフレット版の12ページまで)の内容の背景が理解いただけたことを期待しています。柔道界におけるこれらの課題とその解決策の理解は、重要な一歩となります。連載特集 3

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