連載特集 2得る過程での倫理的な問題や、勝利によって得られる外在的な報酬(金銭的利益、社会的評価など)の追求にあります。社会的な勝利の目的が卓越性の追求から、外在的な報酬の追求へと変質すると、子どもたちに関わる人々の目的もそれに引きずられ、勝利至上主義の問題が深刻化します。これは、子どもたちの内発的なモチベーションを蝕んで、「スポーツ離れ」を引き起こす一要因となりうると懸念されています。日本の柔道界において、戦後にパフォーマンススポーツとしての発展を遂げた経緯から、他の国々にみられるスポーツ離れの原因と同様であると考えました。 それでは、このような問題に直面した国々は、どのような対策を講じているのでしょうか。対策の第一歩として、豊富なデータと膨大なエビデンスに基づいた長期的な育成指針を策定しました。これらの指針は、早期専門化やスポーツ活動の仕方や実践方法などといった過去の問題を解決できるように、課題を設定し対応していくために開発されました。例えば、図2に示されているように、単一種目の早期専門化型タレント発掘・育成モデル、複数種目の早期専門化型シーズン制モデル、単一種目の後期専門化型旧日本陸上モデルなどが、すべて複数種目の後期専門化型のモデルへと進化しています。この流れを踏まえ、全日本柔道連盟も長期的な育成指針を策定したことがご理解いただけたのではないでしょうか。 柔道人口の減少という問題を広い視野で捉えることで長期育成指針の必要性がより明確になったと期待します。長期育成指針のパンフレットは全柔連ホームページよりダウンロードできます。まだご覧になっていない方は、右のQRコードからダウンロードし、ぜひお読みください。図2.育成モデルの変化12まいんど vol.38
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