◀全柔連事務局にて。「現場の声をよく聞き、関係者、関係組織に意見を賜りながら全柔連を運営していきたい」の増加、そして、相乗効果として競技人口の増加にもつながると思うんです。登録人口を増やすことは大事なことですが、競技人口だけを追うのではなく、興味を持ってテレビを観る人、次に会場で観たいと思う人を広く増やしていくなかで、結果として競技人口が上昇に転ずるというのが理想の形ではないかと思います。――全柔連は、実際にいろいろな活動をしていて、少しずつその効果や影響が出てきているようにも思えます。でも、その数値化はなかなか難しいですね。中村 現時点ではどれだけの人が柔道に興味を持っているのかを明確に確認するすべはありませんが、その広がりというものを把握しなくてはいけないと思っています。やはり成果を追って、成果を目に見える形で実感しなくてはならない。ビジネスにおいても、目に見える成果というものは大切ですから。――柔道の普及において、イメージというものも非常に大切な要素だと思います。中村会長は、柔道のイメージについて、一般的にどのように思われているとお考えでしょうか。中村 やはり、残念ながら危険という印象を持たれているという面はあるでしょう。重大事故対策委員会では、安全というものに対するいろいろな発信を行い、柔道というものを正しく行ってもらうための対策をしています。柔道は決して危ないものではなく、むしろ、転び方教室で教えているように、実は身を守るものなんだと。加えて、精神的な部分、教育的な部分、MIND(M:Manners=礼節、I:Independence=自立、N:Nobility=高潔、D:Dignity=品格))が身につくんだと、そういう印象を根付かせたいですね。――日本において、柔道の良さというものがまだ十分に認知されていないように思います。中村 そうですね。危険な部分や、ハラスメントの事案が注目されて、本質がなかなか理解されていない。きわめて残念な部分です。そのためにも、ガバナンスの強化というのは徹底的に行っていかなければならないと思います。 連盟の中にも、いろいろな意見や価値観がある。これは当然のことなんですが、その意見のぶつかり合いを、あたかも対立構造のように外からは書かれがちです。でも、多様な価値観や意見をぶつけ合って、お互いに認め合うことが大事なのです。活発に意見交換、議論をしているのは何のためなのか、重要なのはそこだと思うんです。柔道が持つ人間教育の側面、その価値を広めていく。信頼される柔道界にしたいんだという思い、目指すのはそこだと思うんです。目的がしっかりとしていれば、手段とかやり方に意見の相違があってもそれは大きな問題ではないと思います。――女性の登用、育成に関してはどのようにお考えですか?中村 スポーツ団体ガバナンスコードで、女性の比率も決まっています。当然それに従って進めていますし、今回の理事構成に関しても、それに沿う形で決めています。他の競技団体と比べても、いち早く先駆けて実現していくというのが当連盟の目指すべきところだと思っています。――女性幹部の育成という部分が十分ではないように思います。その部分についてはどうお考えでしょうか?中村 今の人たちが数年後にどういう役割をしていくかというところになってくると思うんですよね。まさに長期育成指針でやっていかないといけないところだと思っています。女性に限らずではありますが、人材をどういうスケジューリングで次のステージに上げるのか。これは民間企業では当たり前なのですが、柔道界でそういう人材育成が大事じゃないかと思いますね。――育成の部分で考えた時に、柔道を高校、大学でやっていた選手が社会人になって続けていけないことから離れてしまうケースもあると思います。受け入れ体制づくりについては?中村 社会人の部分というのは、企業と連携をとりながら、柔道に触れる機会を増やしていく。ただ果たしてこれが全柔連としてできるかというと、なかなか難しい。実業団ではないけれども、大学を出て、会社に勤めるようになった方など周りに柔道をする環境のない方が、自分たちでやれるようにするにはどうしたらいいのか、それが先ほども申し上げた、競技としてやる人だけではなく、趣味としてやる人、健康のためにやる人、そういう人たちのためにどういう場を提供できるか、それが課題だと思っています。――話を変えて、中村会長ご自身の柔道との関わりについて少し教えていただけますでしょうか。中村 父が福岡県立嘉穂高校で英語の教員をしていたのですが、同時に柔道部の顧問をしておりまして、小学4年生の頃から父に連れられて高校の寒稽古に参加したりしていました。それが柔道との出会いでした。教室にいるよりも、道場にいるほうが長かった東京大学時代6まいんど vol.37
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