私の役割は、山下前会長から託された柔道の普及振興と価値浸透の具現化Interview NAKAMURA Shinichi 6月28日(水)に評議員会、臨時理事会が行われ、山下泰裕会長の退任と中村真一副会長の会長昇格が決まりました。そこで、今号は巻頭特集といたしまして、中村新会長のことをみなさんに少しでも知っていただくため、中村会長のインタビューをお届けします。中村会長に、ご自身の柔道との関わり、柔道への思い、そして、会長としての所信表明、意気込みなどをお聞きしました。◀6月28日。山下泰裕前会長から会長職を引き継いだ。「重責に身の引き締まる思い。柔道界の発展のために努力したい」――さっそくですが、会長を引き受けられたお気持ちと、引き受けられるまでの経緯をお聞かせください。中村 柔道の専門家ではない私が、柔道界のレジェンドである山下泰裕前会長の後任を務めることとなり、その重責に身が引き締まる思いです。 山下前会長から、(会長引き継ぎの)声を掛けていただいたとき、私には荷が重いと、一度はお断りしたのですが、山下前会長が「今後、柔道の普及、振興を推進していく上で、柔道専門家ではなく、別の世界でいろいろな経験を積まれているあなたにぜひお願いしたい」と言われました。それで、熟考の末お引き受けすることにいたしました。競技者としての実績はありませんが、今まで柔道と関わってきて、柔道に対する思いや柔道への感謝の気持ちは人一倍持っているつもりですので。――中村会長は、2019年から全柔連副会長として柔道界をご覧になってこられ、柔道界の抱える問題点や課題に関しても持論がおありかと思います。その上で、会長としてどのようなことを行っていきたいとお考えですか?中村 私の会長としての役割は、山下前会長から託された柔道の普及振興、そして柔道の価値浸透をどう具現化していくかということだと認識しています。 先般、柔道界の今後の方向性を示す戦略的グランドデザインとして『長期育成指針』を作成しました。内容がやや難解ではありますが、これを多くの柔道関係者の方々に共有していただくことが大事であり、そのために何が必要か、どうすればいいのかということを考えていきたいと思っています。 この全柔連機関誌『まいんど』でも内容を紹介していきますが(今号より4回連載)、本指針の内容を一言で言うなら、柔道を取り巻くもろもろの課題を認識した上で、柔道に関わるすべての人が生涯をかけて学び続ける理想の姿を示したものです。勝敗を競う競技者、趣味で柔道をする人、健康維持のために柔道をする人、柔道を周囲から支える人など、柔道にを愛するすべての人が、人生のそれぞれのステージで柔道に関わり、柔道から学ぶために、全柔連として指針・施策・実戦の場を整備していくための道しるべです。 これは一朝一夕で実現できるものではありませんし、特効薬となるような施策もありません。でも、そうかと言って雲をつかむような話でもないと思います。 『まいんど』でも、連載中の『普及の広場』、『やわらたちのセカンドキャリア』や『やわら通信』、『委員会インフォメーション』に加え、最近では『転び方プロジェクト』の特集(34号)や『ACP』の特集(36号)など、全柔連で行っている『種蒔き』の状況や、小さな成功事例をたくさん掲載しております。これらを組織的に育て、実らせ、刈り取ることが今後の課題であり、私の役割であると認識しています。そのためにも現場の声をよく聞き、関係者や関係組織のご意見を賜りながら、事務局のメンバーとともに全柔連を運営していきたいと思っています。――現在の柔道界で、大きな問題の一つが競技人口の減少です。この点についてはどのようにお考えでしょうか?中村 競技人口の減少はどのスポーツにおいても言われていますが、柔道もしかりで現在12万人まで減少しています。この右肩下がりの状態を食い止め、せめて横ばい、できれば右肩上がりにしたい。でも、競技人口だけを見るのではなく、柔道を趣味でやる人や健康のためにやる人も含め、すべての人が、人生のそれぞれのステージで、どのように柔道と関わっていくのか。その場所やメニューを提供することが全柔連の使命だと思っています。――柔道人口減の一方で、昨年12月に行われたグランドスラム東京は、チケットが完売するほどの大盛況でした。中村 大会そのもの、出場する選手に興味を持たれていた方も当然いたと思いますが、やはり、興味を持っていただくためのプロモーション、発信といったこともとても大切です。今回、満員になったのは、そういった発信の影響もあったと思います。今後、競技人口だけでなく、柔道に関わっている人の数を把握し、右肩上がりになるようにしていきたい。そうすることが、視聴率の上昇や観客動員5まいんど vol.37
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