まいんど vol.37 全日本柔道連盟
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パリ・オリンピックメダル獲得に向けてパリ・オリンピック出場権 およびシード権の重要性パリ・オリンピックまで残すところ1年を切り、4名の代表選手が内定するなど、代表争いも佳境に入っています。そこで、パリ・オリンピックの出場権を確認したいと思います。パリ・オリンピックの出場権は、世界ランキング上位者に与えられるということは多くの方が認識されていると思います。具体的には世界ランキング17位以上の選手とそれらを除いた各大陸のランキング上位者となります。そのため、IJFツアーに出場しポイントを加算し、各階級最低でも2名以上は世界ランキング17位以内に位置しておく必要があります(ケガ等で出場できない選手がいた場合の補欠として)。パリ・オリンピックへの出場権を獲得することが大前提とはなりますが、オリンピック本番を優位に戦うためにはシード権の獲得が重要となります(※シード順によって上位8名は配置が決定しているため)。過去のオリンピックにおいても、この「シード権」獲得が重要であることは明らかです。具体的には、リオデャネイロ・オリンピックでは56人のメダリスト(7階級×4メダル×男女)のうち、48人(86%)がシード権を獲得していました(P15表1参照)。また、東京オリンピックでも同様の傾向があり、56人のメダリストのうち、47人(84%)がシード権を獲得していました(P15表2参照)。このことから、男女ともにシード権を獲得した選手がメダルを獲得する傾向は顕著です。特に女子の場合は実力差があり、シード権を獲得した選手がメダルを獲得する可能性は極めて高いです(東京オリンピックではメダリストのうち92%がシード権獲得)。このシード権を獲得するためには、IJFツアーに出場しポイントを加算する必要があります。パリ・オリンピックへの出場権、ならびにシード権は2022年6月から2023年6月までのIJFツアーでの獲得ポイントが50%で換算され、2023年6月からパリ・オリンピック直前までのIJFツアーでの獲得ポイントが100%で換算されます。そして、その合計で順位が決まります。そこで、実際にどのくらいのポイントを獲得すればシード権に繋がるのかですが、ランキング上位(8位以内)選手は年間で約3000ポイント獲得しています。そのため、階級によって誤差はありますが約4500ポイントが上位8人に入る目安になります。現時点(7/10時点)で日本人選手の各階級最上位選手の獲得ポイントを平均すると男子が約2000ポイント、女子は約2500ポイントです。過去の傾向から外国人選手は、年間で約7試合前後IJFツアーに出場し上記のポイントを獲得しているのに対して、日本人選手は、約4試合前後IJFツアーに出場しています。この原因として、外国人選手は、自身の国でライバルとなる選手が少ないことから、ある特定の選手がIJFツアーに連戦することが多く見受けられます。日本人選手は、外国人選手の約半分の出場機会で外国人選手と同等のポイントを獲得する必要があります。このことから、日本人選手は、限られた派遣大会において確実にポイントを加算し、ランキング上位に入る必要があります。ですが、外国人選手も同様に出場した機会でのポイント加算を望むことや強豪選手との対戦を避けるため、パリ・オリンピックまでの1年は、日本人選手が派遣されている大会には上位選手はエントリーしないことが予想されます。(科学研究部・山本幸紀) 世界に広まり、いまや世界中に強豪がいると言っても過言ではない柔道。だからこそ、勝つため、メダルを獲るためには、技術だけでなく、さまざまな戦略や緻密な対策が必要になります。 「日本は、何もしなくてもオリンピックに全階級出られるし、メダルの可能性も高い!」そんなふうに考えている人が多いのではないかと思います。しかし実は、出場者数に限りのあるオリンピックは、日本と言えども特別ではなく、出場権を獲得するためにIJFツアーに出てポイントを稼ぎ、シード権を得るために、グランドスラムやグランプリなどの大会で高いポイントを積み重ねていかないといけないのです。 今回は、そのあたりのことについて、強化委員会科学研究部の山本幸紀部員が解説します。14まいんど vol.37

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