まいんど vol.35 全日本柔道連盟
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医師によっては、アンチ・ドーピングの知識を持ち合わせない方もいるため、選手自身がドーピング禁止薬剤か否かを調べることのできる「Global DRO (The Global Dr ug Reference Online)」検索サイトの紹介もありました。これらを活用し、日頃から正しい知識を持って、柔道に取り組んでほしいと思います。 最後に、JOCの上田大介氏からスポーツインティグリティについてのお話があり、インティグリティ(誠実さ、真摯さ、高潔さ)を高め、自らの価値、オリンピックの価値を守る知識と手段、正しい倫理観や道徳心を有することの大切さをお話しいただきました。今後も、講義の内容をしっかりと理解し、日本代表の自覚を持ち、模範となるような行動を心がけていきたいと思います。(副委員長 中村淳子)医科学委員会 世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」で、日本は146か国中116位であり、先進国の中で最低レベルという結果でした。国内では男女共同参画を推進する動きが活発になっており、スポーツ庁が求めるスポーツ団体ガバナンスコードにおいても、女性の活躍推進が盛り込まれています。 全日本柔道連盟では、組織の中に女性役員が増え、女子柔道振興委員会を中心に女子柔道の振興に取り組んできました。医科学委員会では、2022年にはじめて3名の女性の特別委員を迎え、組織の活性化を図っています。活動の一環として、女性柔道選手の健康を守るために、月経と減量に関するコンディショニングについての研究に取り組み始めました。 成長期に強い強度の運動を継続することで、初潮が遅れたり、生理周期が不順となることがよく知られています。特に、度々減量を要する状態が続くと生理周期が乱れ、無月経になることも珍しくありません。また、月経前に心身に生じる不調(月経前症候群)や生理中の下腹部や腰の痛みなどの月経困難症が柔道のパフォーマンスを低下させる場合や、生理時の体重増が減量時の悩みになる場合など、女子選手が柔道をするうえで悩まされる課題があります。一方、生理に関する女子選手の悩みを理解し、受け入れることができる男性指導者は多くないと予想されました。そこで、医科学委員会では、女子柔道選手を対象とした月経と減量に関するコンディショニングについての実態調査を、指導者に対しては月経理解度についての実態調査を開始しました。 医科学委員会でミーティングを重ねて内容を練ったアンケートを、大会出場選手と指導者に回答いただくようお願いしてきました。これまで、全日本学生優勝大会、インターハイ、全日本ジュニア体重別選手権、全日本実業個人選手権大会、全日本学生体重別選手権大会などの大会出場選手と指導者にアンケートを依頼しました。アンケートへの回答はGoogle Formを使い、これまでに女子選手約250名、指導者約50名からご回答いただいております。ここまでの主な集計結果を紹介します。■女子柔道選手からの回答⃝月経周期の異常がある(20%)⃝3か月以上の無月経があった(15%)⃝月経前に食欲が増進する、体重が増える(50%)⃝月経前にパフォーマンスが低下する(40%)⃝月経中にパフォーマンスが低下する(50%)上がる(20%)⃝月経に関する正しい知識を得るための教育を受けていない(20%)⃝月経周期が判らない、把握していない(25%)⃝月経周期の管理をしていない(22%)⃝減量期間中に月経異常を経験(50%)■指導者からの回答⃝月経異常や月経前症候群についての知識がある(男性指導者50%、女性指導者90%)⃝選手から月経や随伴する症状について相談された経験がない(40%) 女子柔道の振興に関しては、すでに松田基子委員長を中心とする女子柔道振興委員会が全国的な活動を展開されており、全柔連内で連携を深めていくほか、「一般社団法人スポーツを止めるな」の『1252プロジェクト』との協議を始めています。1252プロジェクトとは、1年間(52週)のうち、生理による不調を感じる12週に対し女性アスリートがどのように向き合うか考えサポートするプロジェクトです。(※P14参照) 今後、さらにデータを増やして解析を進めたうえで、選手や指導者が知っておくべきことをまとめ、周知させる活動を展開していきたいと考えています。(委員長 三上靖夫)大会事業委員会 12月3~4日の2日間、グランドスラム東京2022が東京体育館で行われました。国内で開催されるグランドスラム大会は2018年、19年は大阪で開催し2020年、21年は中止になりましたので、東京開催は5年ぶりです。 その間も全柔連主催大会は行われていたので大会運営の経験は重ねていましたが、5年ぶりの東京開催であり、われわれ運営スタッフは気持ちを引き締めて臨みました。 今までの大会は試合場3面で3日間開催でしたが、今回は5面で2日間開催だったので、細かい部分での調整が必要でした。 具体的には、選手入場ゲートから一番遠い第5試合場の選手が歩いて何秒かかるのかを計測して選手誘導に反映させたり、選手受付のモニターに5試合場分の出場選手が掲示されても小さくて見えづらいことから、試合順序表(コンテストオーダー)を紙ベースで届けるなどしました。 また、決勝戦と同じ時間帯で翌日の出場選手の計量もあり、係員の配置に苦労しました。さらに、いろいろな場面でIJF(国際柔道連盟)から実にたくさんのリクエストが飛び込んでくるので、その対応にも力を注ぎました。 今大会では、大会運営に精通している試合場統括係(各試合場の主任)を5名そろえることも重要でしたが、大会運営の要(かなめ)となる競技進行係と選手係に若手の委員を起用し、10年後も全柔連主催大会の運営が問題なくできるように経験を積んでもらいました。 大会2日目の終了時間が午後9時を超える長丁場で運営スタッフはたいへんでしたが、大きな混乱やトラブルがなく、無事に大会を終えることができました。 これからも、何事もなく大会が始まり、何事もなく大会が終わることができるように、そして選手がその力を最大限に発揮できるように、われわれ運営スタッフも全力で用務にあたりたいと思っています。重大事故総合対策委員会 当委員会では柔道の重大事故防止のための啓発活動とともに、都道府県柔道連盟(協会)の事故防止、安全指導の推進への協力をお願いしているところであります。 再三の啓発、注意喚起となりますが、コロナ禍の続くなかで、柔道事故の報告件数が増加傾向にあり、特に、今年度は頭部外傷が多発し(脳しんとう5件、急性硬膜下42まいんど vol.35

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