メディカル編ゼミナール柔道JUDOこのコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。指導者のスキルアップのための全柔連医科学委員会アンチ・ドーピング部会委員。東京大学医科学研究所附属病院外科助教。専門は消化器外科。東京慈恵会医科大学→順天堂大学大学院卒業。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。医学博士。柔道四段、相撲三段、ブラジリアン柔術茶帯PROFILE解説:柵山尚紀全日本柔道連盟医科学委員会 委員ドーピングとは今回はアンチ・ドーピングについてお話させていただきます。みなさんは「ドーピング」という言葉をご存じでしょうか?「ドーピング」という言葉は、1994年のIOC(国際オリンピック委員会)の規程で、「スポーツ選手が競技力を高めようとして薬物などを用いること」と定義されています。例えば、薬物を用いて筋力・持続力・集中力を高める、疲労・不安感をなくす、減量する、などです。筋肉増強剤を使って筋力を増強する、造血剤などを用いて持久力を高める、興奮剤を使って集中力を高める、利尿剤を使って減量する、などがドーピングとされます。ドーピングは人だけでなく、競走馬などに薬物を不正に使用されることもドーピングに定義されます。最近では自転車競技など、自転車に電動モーター等を搭載する、「メカニカル・ドーピング」などの違反者も発覚しています。ドーピングの歴史ドーピングの歴史は古く、古代ギリシャ時代に興奮剤等がドーピング目的で使われており、最も古い記録としては、1865年、アムステル運河水泳競技大会で使用した選手がいたことが残っています。1886年、ボルドー~パリ間の600km自転車レースで、イギリスの選手が興奮剤の過剰摂取により死亡しています。これが記録として残る最初の死者です。初期のドーピングとしては、主に競技会(試合)で興奮剤が用いられていました。興奮剤の過剰摂取で選手が競技中に死亡する事故が発生し、興奮剤の使用が禁止されましたが、当時は検査の方法がなく実効性は乏しかったようです。1966年に、初めてのドーピング検査が実施されています。なぜ、ドーピングは禁止されるのか?ドーピングが禁止される理由には、いろいろありますが、最も大きな理由は、「選手の健康を害する」ことです。ドーピングにより生涯にわたって生活を脅かす恐れのある「副作用」を発症することがあり、過去には、深刻な副作用の発症報告や、時に心臓発作等を発症し「突然死」した症例も、疑いを含めていくつも紹介されています。「フェアなスポーツ精神に反する」「社会に害を及ぼす」「スポーツ固有の価値を損ねる」なども、ドーピングが禁止される理由です。ドーピングの禁止物質についてドーピングの代表的な禁止物質の一つに「ステロイド」があります。ステロイドにもいろいろな種類がありますが、「蛋白同化ステロイド」という筋力増強剤(アナボリックステロイド)が有名なドーピング薬と言えるでしょう。この蛋白同化ステロイドは、肝障害、肝臓癌、前立腺癌、高コレステロール血症、高血圧症、心筋梗塞、糖尿病などの病気を引き起こしたり、うつ病などの精神症状、行動変化が見られたり、男性に使用した場合、女性化乳房、睾丸の萎縮などの女性化が起き、女性に使用した場合には、男性化が起きたりします。蛋白同化ステロイドは、さまざまな副作用を引き起こす非常に危険な薬です。ドーピング規則違反についてみなさんが考える「禁止薬物を使用すること」と「アンチ・ドーピング規則違反」は、イコールではありません。正当な理由があれば、禁止薬物を病気の治療目的で使用することが認められます。逆に、禁止薬物を使用しなくとも「アンチ・ドーピング規則違反」になることがあります。実際には、ここに挙げる11の項目が、アンチ・ドーピング規則違反に該当します。全柔連の医科学委員会には『アンチ・ドーピング部会』があり、指導者や選手に、ドーピングに関する正しい情報の提供を行っています。今回はみなさんが知らない『ドーピング』、そして、知っておいてほしい『アンチ・ドーピング』について説明します。柔道におけるアンチ・ドーピングについて32まいんど vol.35
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