まいんど vol.34 全日本柔道連盟
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▲教育普及部会シニア・転び方プロジェクトリーダー・曽我部晋哉教授(甲南大)【参考資料】1)Falls: World Health Organization. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/falls【参考動画】EJU Education Project “Judo Ukemi Lessons at School”https://www.youtube.com/watch?v=Impg38aM6Kw厚生労働省:スベッチャダメよ!転倒予防 ムチャしちゃダメよ!腰痛予防https://www.youtube.com/watch?v=oyF-NBMliP0 また、より医学的な観点からは、日本転倒予防学会が学術会議や講習会を通じて転倒予防を啓発しています。各企業や自治体も転倒予防に積極的に取り組み、さまざまなリーフレットも作成しています。 しかしながら、我が国においては、転倒予防に対する明確なエビデンスと方法が確立されていないのが現状です。転倒予防に柔道は貢献できないか 転倒は、さまざまな要因が連鎖し発生します。単にバランス能力が低いとか、筋力が不足している、という個別事情によるものではありません。しかし、歳をとる=加齢は、ヒトであれば誰しも避けることができない生理現象であり、加齢による機能の衰えは避けられない現実だと言えるでしょう。そうはいっても、できれば転ばないで生涯元気でいたいものです。 柔道の競技特性は、相手を倒し合うスポーツであると同時に、倒されないようにするスポーツでもあります。つまり、転倒予防には最も適した動きなのです。さらに、転倒した際には、「受身」によって身を守ることができ、これこそが世界の転倒予防プログラムの観点から注目される所以であると考えられます。 そこで、柔道が転倒予防に適している特徴について整理してみましょう。①倒れないスポーツである。 ⇨静的・動的バランス能力の向上②反射を制御する運動である。 ⇨危険な時にケガをしない動きの学習③素足の競技である。 ⇨足底からの姿勢保持の情報収集④衝撃から身を守る受身がある。 ⇨転倒による事故の予防⑤寝姿勢と立位姿勢を含む運動である。 ⇨足底のみならず体表からの情報収集⑥相手と組み合う競技である。 ⇨外的刺激への反応人類を元気にするプロジェクト 本プロジェクトのキーワードは、人々の「生きがい」「やりがい」「ふれあい」の創出です。転倒予防というツールを利用し、地域社会、ひいては日本及び世界全体を元気にするプロジェクトです。 我々が目指すのは、単に柔道を利用した転倒予防法の確立ではありません。また、健康体操の一環でもありません。これから進めていくことは、柔道に内在する価値を細かく分解し、それらが、どんなことに、なぜ有用なのかといったことを、明らかにしていくことです。そこから得られた知見をもとに、確固たる方法論を確立し、誰もが安全かつ科学的な知見をもって利用できる、そういったマニュアルを2025年の完成に向けて、研究チーム全員で創り上げていきたいと思っています。 私たちが創造するのは20年後の、笑顔に満ちあふれた世界です。(教育普及部会 曽我部晋哉)8まいんど vol.34

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