まいんど vol.34 全日本柔道連盟
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WHOの提言“Prevention strategies should emphasize education, training, creating safer environments, prioritizing fall-related research and establishing effective policies to reduce risk.”「転倒を予防に取り組むために、教育、トレーニング、安全な環境づくり、転倒予防に関する研究の優先順位を上げ、転倒の危険性を軽減するための効果的な政策を確立すべきである」(筆者訳)図3 65歳以上の転倒状況(2020年)▲写真1 クロアチアのJudo in Schools。放課後の体育館を利用し、手前が低学年、奥が高学年で、各々プログラムが行われている◀写真2 生涯スポーツ柔道としての形の練習。性別・年齢問わず、熱心に形の練習を行っている階下まで転落したり、雪国でニュースにもなるような屋根の上から雪を降ろしているときなど、そのような状況のときに死亡事故につながるのではないかと、一般的には考えられるかもしれません。では、65歳以上の死亡事故のうち、家庭内のどのような場所で転倒したのかをみてみましょう(図3)。 「スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上の転倒」と「階段及びステップからの転落及びその上での転倒」を比べてみると、65歳~79歳、80歳以上いずれも同一平面上での転倒が多いことがわかります。特に80歳以上では、日常生活そのものに転倒のリスクを孕(はら)んでいると言えます。WHOによる転倒予防対策の提言 実は、世界的にも転倒は大きな問題となっています。WHO(世界保健機関)の報告によると、不慮の事故で亡くなる死因は、第1位が「交通事故」、第2位が「転倒」であり、毎年約68万4千人もの命が失われています。さらに死亡に至らなくても、転倒によって重篤な損傷を伴うものは3730万件も発生しているのです。これらの転倒は生涯にわたり身体の障害を伴うこととなり、交通事故やその他の要因による後遺症よりも、さらに大きな数字なのです。また、海外においても日本と同様に、高齢者は転倒による死亡リスクが高いようです。アメリカでは、転倒した高齢者の20~30%は、何らかの障害が残るような中等度以上の重篤な傷害を負っていると報告されています。 WHOは、高齢者向けの予防プログラムとしてウォーキングやバランストレーニングの他に、中国で健康増進法として日常的に行われている『太極拳』を推奨しています。そして、世界中の人々を転倒から守るために、左記のように提言しています。欧州を中心とした転倒予防の取り組み WHOの提言を受け、さっそく動き出したのがヨーロッパ柔道連盟です。高齢者と並んで、転倒・転落による死亡リスクが高い子どもに対するアプローチを開始しました。学校教育のなかで「受身」を習得させれば、学校内における事故を減らすことができます。さらに、生涯のうちで最も神経系の発育が盛んなこの時期に「受身」を身に付けることで、高齢になってもずっとその恩恵を受け続けられるというわけです。 最初にプロジェクトを立ち上げたのは、スペインのセビル大学(University of Seville)の専門チームで、ヨーロッパ柔道連盟と協力し、“Safe Fall”プロジェクトを推進しました(『まいんど』24号:『海外の6まいんど vol.34

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