まいんど vol.34 全日本柔道連盟
32/48

図1 突然死をきたしうる心筋症の使用による除細動により救命できることがわかっています。Ⅲ 突然死・心停止に対する事前の対策活動中の突然の心停止から命を救うためには事前に対策を講ずることが大切です。①救命講習を受けておく指導者や関係者に大会前の救命講習への参加を促し、緊急時に救命処置ができる人を増やしておくことも心臓突然死を防ぐための対策です。どれほど多くのAEDが設置されていてもAEDの適正な使用や適切な救命処置をできる人がいなければ効果が発揮できません。体育施設での活動中は周りに人がいることが多く、誰かが倒れても発見しやすい環境です。事前に講習を受け救命処置を実行できる人がいれば、突然の心停止から命を救える可能性が高まります。救命は一刻一秒を争うため、迅速に行うためには、講習で事前に一連の流れを理解しておくといざというときに落ち着いて対応することができます。②健康診断やメディカルチェックを受ける中学校や高校の生徒は、心疾患の早期発見および突然死予防のために、定期健康診断における検査項目のひとつとして心臓検診があり、心電図検査を受けるようになっています。生徒の異常があるかを確認して活動を行いましょう。中高年の場合でも、定期的に健康診断を受けておきましょう。また、持病がある人は、過去数週間に胸痛や息切れ、めまい、失神などが起きていないかを確認し、当日も自分の体調を確認し、無理はしないようにしましょう。特に持病がない人も、自分の健康状態を過信せず、運動を始める前には万全の体調であるかを改めて確認することが大事です。③ AEDの設置位置の確認をする心停止は対応までの時間が生死を分けるといえます。心停止後何もしないと、1分経過するごとに助かる可能性は約10%ずつ低くなるため、救急車を呼ぶのは当然のこと、救急車が到着するまでの間も一次救命処置を行うことが重要です。また、AEDの設置位置を確認し、いつでもすぐに使用できる準備をしておくことで、命を救える可能性が高くなります。Ⅳ 救命処置の手順①周囲の確認目の前で人が倒れたり、倒れている人を目撃したときは、傷病者に近づく前に周囲の安全確認を行いましょう。競技が続行中の場合は、傷病者がいることを周囲に知らせて活動を停止させ、傷病者と救助者の安全を確保します。②意識の確認傷病者の肩をたたく、声を掛けるなどして反応を確認します。耳元で「大丈夫ですか」と3回ほど声をかけ、反応が無ければ救助をしましょう。③119番通報とAEDの要請呼びかけに反応しない場合、周囲の人に助けを求めましょう。大きな声で119番への連絡とAEDを持ってきてもらえるよう要請してください。119番通報の際は、傷病者がいる場所を具体的に伝えてもらいます。④呼吸の確認正常な呼吸があるかどうかを目で見て確認します。胸と腹部が動いていない、普段どおりの呼吸をしていない、判断に迷う場合は呼吸が止まっていると判断します。呼吸の確認には10秒以上かけないようにしましょう。正常な呼吸がある場合は、嘔吐や吐血による窒息を防ぐため身体を横向きに寝かせ(回復体位)、救急隊が到着するのを待ちましょう。⑤胸骨圧迫 (心臓マッサージ)意識と呼吸がない場合は、ただちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行います。胸の真ん中(胸骨の下半分)に手のひらの根元の部分を当て、両手を重ねて肘を伸ばし、真上から押し込むようにして、約5㎝の深さ、1分間に100~120回のテンポで「強く」「速く」「絶え間なく」圧迫します。⑥AEDの使用◦AEDの電源を入れるAEDが届いたらまず電源を入れます。AEDから音声ガイダンスが流れるので、その指示に従って操作してください。◦パッドの装着と心電図解析傷病者の上半身の衣服をはだけて、AEDの指示に従って電極パッドを胸にしっかり貼り付けます。傷病者の肌が汗や水で濡れている場合は、タオルや衣服などで胸部の水分をしっかりふき取ってから電極パッドを貼り付けましょう。肌が濡れた状態だとパッドが肌に密着せず、AEDの効果が十分に発揮できなくなるため注意が必要です。パッドが胸に装着されると、AEDが自動で心電図を測定・解析します。『体に触れないでください。心電図を調べています』といった音声が流れるため、傷病者から離れて心電図の解析が終わるのを待ちます。◦電気ショック(必要な場合のみ)電気ショックが必要だとAEDが判断した場合は、『電気ショックが必要です。体に触れないでください。点滅しているショックボタンを押してください』といった音声が流れますので、AEDの指示に従いショックボタンを押して電気ショックを与えます。この際、周囲の人が傷病者の体に触れていないか安全確認をしてください。⑦胸骨圧迫の継続 心電図解析後(または電気ショックを与えた後)は、ただちに胸骨圧迫を再開し救急車が到着するまで続けます。胸骨圧迫は適切な深さとテンポを意識しながら中断なく行うことが重要です。周囲に手伝ってくれる人がいる場合は、1~2分程度を目安に交代しながら胸骨圧迫を続けてください。中断時間を作らないよう、交代は10秒以内で行います。31まいんど vol.34

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る