図3個々の誘因も発症に関与しています。いったん発症すると治癒まで長期間を要することがあり、その間運動の制限を行わないといけないことがあります。また剥離部が骨小片として残存すると成人になってからでも疼痛が残り、手術的治療も必要となることがあり、初期の対応が大切です。【病態・診断】オスグッド病は発育期における運動による牽引力が膝蓋腱付着部の脛骨粗面部に集中し、脛骨結節の骨化核および軟骨が分離または剥離するときに骨の突出や痛みが生じます。この骨化核は将来、遊離し骨片が残る場合や、癒合しても突出変形することがあります。オスグッド病の発症には脛骨粗面の発育過程が大きく関与しています。脛骨粗面の骨化過程は、脛骨近位骨端部が前方へ発達し、脛骨粗面部の二次性骨化核が出現、脛骨近位の骨端核と癒合して舌状突起を形成、その後両骨端核が癒合して骨化が完成します。脛骨粗面部の発育過程は4期に分類されています。・Cartilaginous stage:骨化核の出現前(10才以前)・Apophyseal stage:舌状部に骨化核が出現する時期(10~11才頃)・Epiphyseal stage:脛骨結節の骨化が脛骨骨端に癒合しているが、脛骨結節の表層は軟骨で覆われている(13~15才頃)・Bony stage:骨端線閉鎖(18才頃)オスグッド病はApophyseal stage(舌状部に骨化核が出現する10~11才頃)かEpiphyseal stage(脛骨結節の骨化が脛骨骨端に癒合する13~15才頃)に最も多くおこります。 脛骨粗面部が軟骨や骨化核で形成されている時期は膝蓋腱と繊維軟骨で結合しており力学的に脆弱な部位です。スクワットやジャンプ動作、同部位への直達力の繰り返しにより膝蓋腱の牽引力で脛骨粗面部の骨化核の分離または剥離がおこります。発症誘因として、発育急進期に膝周囲における骨の長軸成長に筋、腱の伸張が追い付かなためにおこる筋肉の相対的なタイトネスがあります。大腿骨と脛骨の長軸方向の成長は約70%が膝関節部でおこるため、大腿四頭筋の緊張が高まり柔軟性が低下することにより脛骨粗面部への機械的ストレスが増大します。発育急進期は男子で13才、女子で11才前後であり、発育急進期の時期に多く発症しています。オスグッド病は思春期のgrowth spurtと呼ばれる、急速に身長が伸びる時期に一致して多く発症します。したがってオスグッド病の発症の予防と対応には、身長の定期的な測定により身長成長速度曲線のどの区分に該当しているかを把握し指導にあたることが大切です。レントゲン画像上の病期分類では・初期:脛骨粗面部に限局性透亮像を認める・進行期:分離・分節像を認める・終末期:遊離対形成を認めるのように分け、治療の進み具合を分けています。脛骨粗面の発達段階と病期をきちんと把握して管理をするべきであると考えられます。【治療と予防】成長期(初期・進行期)では痛みに応じた運動制限を行います。運動時に痛ければ運動制限を行いますが、日常生活に影響が出るようならば学校の体育なども制限したほうがいいでしょう。一時的に運動を制限することが、症状緩和や病気の進行抑制に有効になります。この際に、レントゲン検査を行い、脛骨粗面の骨化が周りと癒合しているか、成長段階は進んでいるかといったことを確認しましょう。成長期は成長段階をよく理解し、また成長に応じた相対的筋短縮(筋肉が骨の成長に追いつかない)をおこさないように大腿四頭筋やハムストリングのストレッチを行いましょう。装具なども有効なことがあります。終末期では(成長期を過ぎた時期)痛みに応じた運動制限と抗炎症剤(内服・外用)と物理療法を行います。遊離しても痛みが出ないことがありますが、持続する痛みに対して骨片摘出などを行う場合があります。初期・進行期では骨癒合と分離・剝離の状態を見るため運動制限が必要な期間が数か月に及ぶこともあります。終末期で遊離した場合でも痛くないこともありますが、初期・進行期で癒合させ治癒したほうがその頻度は少なくなります。発症初期に運動制限をしっかり行い、確実に癒合を確かめてから再開しましょう。試合や稽古を優先すると、癒合を知る時期を逸し、遊離したものは後で癒合はしません。脊椎分離症も同じですが、成長期だからこそ治すべきといえます。29まいんど vol.33
元のページ ../index.html#30