まいんど vol.33 全日本柔道連盟
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「最近の子どもたちは、途中で辞めてしまうことが多い」。道場の先生方からそのような声が聞こえる。今回は、子どもたちはなぜ柔道を辞めたいと思うのか? 各国でその理由に違いはあるのだろうか? アンケート結果をもとに分析してみた。各国の柔道を習う子どもたちの保護者に対して実施した「お子さまが柔道を辞めたいと言ってきたことはありますか?」という質問の結果を、図1に示す。 子どもが最も「辞めたい」と言ってきた国の割合が高いのが日本で34.4%、次いでフランス33.3%、アメリカ29.3%と続く。基本的に、現在柔道を続けている子どもの保護者に聞いているので、実際に辞めた人数は含まれていない。辞めたいと言ってきた理由について、日本で最も多い理由が「他のスポーツがしたい」、「試合に勝てない」、「練習が厳しい」と続く。 日本では、子どもの頃にさまざまな競技スポーツを並行して行うという人は多くない。むしろ、何か一つの競技を極めさせて自己肯定感を高めるのが美徳という風習があるように思われる。しかし、成長期の子どもの発育のスピードはさまざまだ。柔道のように個人競技で試合に出て、体格差のある同級生に10秒以内に負けるとメンタル的に凹んでしまうのも無理はない。サッカーや野球など他の集団スポーツで楽しそうにしている競技がうらやましく思えるというのもうなずける。そういった背景を踏まえた結果ではないだろうか。 一方、注目すべきはフランスの「カッコ悪い」という理由が一番である点だ。フランスで競技人口が最も多いサッカーのプロ選手たちの華やかな振る舞いと比べると、柔道の規律を重んじた行動がカッコいいとは思えないのではないだろうか? カッコ悪いというより、堅苦しいというニュアンスが近いかもしれない。 教育的な柔道を目指せば、フランスのように華やかさに欠ける位置づけになる。競技志向の柔道を目指せば、これまでの日本のように勝ち負け優先の位置づけになる。これを踏まえて、子どもたちにとって何が正解なのか、我々大人が柔道のあるべき姿を模索する必要があるだろう。教育普及・MIND委員会 教育普及部会 文/曽我部晋哉(甲南大学 教授)子どもたちの本音に迫る。「柔道、なんで辞めたいの!?」23回目 教育普及・MIND委員会では、日本の柔道教育普及活動をより充実させるために、各国連盟の協力のもと、世界の柔道最新事情や取り組みについての調査・報告をしております。さて、日本では小学生の低学年のうちから柔道を始めても、6年生まで続かずに途中でやめてしまう子が多いと言います。せっかく始めた柔道、できれば長く続けてほしいと、保護者も指導者も思っていることでしょう。そこで、日本を含む7か国の保護者に「子どもたちが辞めたいと言ってきたことがあるか、また、その理由は何なのか」を調査して比較してみると、各国の諸事情が垣間見えてきました。図1.子どもが辞めたいと言ってきたことはあるか図2.柔道を辞めたいと言ってきた理由

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