▲対抗戦後の両校部員による記念撮影学習院高等科×筑波大学附属高校い対抗戦の開催が困難な状況に陥った。この時の状況を当時の柔道部顧問(現在、学習院高等科教頭)の坂下誠氏はこう振り返る。「さすがに部員が1人しかいないので対抗戦の中止を覚悟しました。でも両校OBの対抗戦開催への思いが強く、他の運動部の柔道経験者や留学生の柔術経験者をかき集めてメンバーを揃えて『非公式試合』という扱いですが、なんとか開催にこぎつけました」。翌年には部員数が盛り返したことで危機を脱し、その後は公式試合として継続している(令和2年はコロナ禍により総合定期戦の全競技が中止となった)。令和のいまも 歴史を受け継ぐ対抗戦初めて単独チームで対戦した明治36年から数えて119年目の今年。対抗戦は6月4日(土)、新型コロナ感染症対策のため無観客試合として開催された。現在の両校部員数は附属13人、学習院12人だが、初心者も多いため安全を考慮し5人制で実施した。「独特の緊張感があり、1年間相手を研究して臨んでいる」(学習院3年 本村将人主将)、「この対抗戦が僕らにとっては引退試合、常に目標にして練習している」(附属3年 鎌刈雄大主将)、と両校にとって年に一度の特別な試合であり、おのずと緊張感が高まってくる。ピーンと張りつめた空気のなか、まず行われたのは点取り戦。先鋒戦、次鋒戦はどちらも譲らず引き分け。迎えた中堅戦、学習院・青木(3年)が小外刈で技ありを奪い先制すると、副将戦では附属・鎌刈(3年)が学習院・本村(3年)の小外刈に崩れながらも寝技に切り返し横四方固で一本勝ち。1対1で迎えた大将戦、体格に勝る学習院・林(2年)が豪快な大外刈で技ありを奪い、そのまま袈裟固で抑えきり合わせ技一本。まずは学習院が2-1で先勝した。続いて行われた勝ち抜き戦は、抜きつ抜かれつの展開となる。学習院・中堅の本村が2人を抜くと附属の副将・田中(2年)が2人抜き返し、学習院・大将の林を引きずり出す。1人ビハインドの場面にも林は落ち着いて田中を小外刈で仕留めると、大将同士の対戦となった鎌刈には支釣込足で一本勝ち。一人残しで学習院が連勝し3大会ぶりの優勝を決めた。勝った学習院も敗れた附属も、この一戦にかける気迫があふれるすばらしい試合ぶりであった。それぞれの時代の先輩たちが必死に伝統の灯を守ってきた対抗戦。令和のいまも、そこにかける情熱はしっかりと受け継がれている。〈取材協力〉学習院高等科坂下 誠教頭水野直澄教諭筑波大学附属高校鮫島康太教諭
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