「多くの選手は引退を考える頃、次どうしたらよいのかと悩むと思います。自分から柔道を取ったら何ができるのか? 不安を抱かれる方もいると思います。私の場合は27歳のときにケガ等も重なり引退しました。そして、次の目標のための貯金と、一般職への憧れもあり、会社に残していただき働かせていただきました。その頃は柔道整復師という職業は知っていましたが、それがどう柔道につなげることができるかまでは考えていませんでした。ただ、将来的にも柔道には携わっていきたい、目の前でケガをした選手に対して何かできるようになりたいと、そんな漠然としたものでした。選手を引退し、社会人して働きはじめ、最初の1年間は本当に大変でした。しかし、いろいろな業種の方やたくさんの人たちと接することができ、いままで知らなかった新しい世界を見ることができたことや、仕事をすることの楽しさを学べたことは私にとっては宝物です」。赤岡先生は女子柔道がいまほど盛んではない時代、前例や先輩も少ない時代に、自分で目標を定め、努力して進んできた人です。もちろん、赤岡先生の人柄が、たくさんの周囲の人からの応援も呼び込んだのだと思いますが、柔道の精神がしっかりと入っている人だと感じました。赤岡先生は現在、呉竹医療専門学校が地域社会貢献として行っているキッズ柔道教室の指導をしています。そこで目指しているのは、勝つための柔道ではありません。『あいさつをしよう! みなと仲良くしよう! 人を大切にしよう!』であり、人を思いやる心を育てたいというのが、最も大切にしていることなのだそうです。「小学生に対して、勝つだけの柔道をさせても意味がないと思っています。なぜかと言うと、勝つためにはテクニックが必要で、スタンダードの柔道が身につかなくなる。そしたら、そこまでで終わってしまう。やはり、スタンダード、基本ができていて、そこから枝葉ができて、自分のスタイルができていくと私は思っています」そして、新しい世界に飛び込む不安については次のように語っています。「少しでも興味を持ったことには、ぜひトライしてみてほしいと思います。『自分は何ができるのか』ではなく『興味があるものは何か』を探し、柔道で培った精神力で道を切り開いてほしいと思います」最後に私(筆者)の感想。興味があることを見つけても、できない理由を探して諦めることは簡単です。どうやったらできるのかを考え、柔道で培った不撓不屈の精神で挑戦し努力する。赤岡先生にはその柔道スピリッツがあり、経歴には「精力善用」「自他共栄」が貫かれていると感じました。
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