まいんど vol.32 全日本柔道連盟
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2022.5 Vol.32 私を育ててくれた柔道界は、現在登録人口の減少という厳しい事態に直面しています。その原因は、少子化による子どもの減少という日本社会が抱える構造的な要因もありますが、「柔道は暴力的な指導が横行している」というイメージを一般の方に持たれがちであることも小さくない要因と感じています。残念ですが、実際にそうした訴えがあることも私の耳にも届いてくることがあります。 私が柔道を始め、現役選手として必死に鍛錬を積んでいた時代は昭和です。今の時代と異なり、「愛のムチ」として手が出るような指導があったことは事実ですし、社会全体も「愛情あっての熱心な指導の現われ」と好意的に解釈して容認する風潮がありました。しかし、今や令和の時代。指導を受ける側の選手たちの考え方や社会の捉え方も大きく変化し、物理的な力を用いる指導はもちろん、大声での指導も場合によっては「暴力」とみなされ、許されない状況になっています。また仮に、手を上げたり怒鳴りつけて指導者の思うようにさせても、それはその場だけのこと。指導される側は、その場をやり過ごすために言われたままに動くかもしれませんが、それを続けることは少ないでしょう。つまり指導にはなっていないのです。 手を上げるような指導者は現在ではごく少数だと考えます。ただ今でも体罰的な行動に出てしまうことがあるとすれば、その方たちは人を説得する話術が足りない、さらに言えば人を説得できる話し方の工夫や、話術を磨く努力が足りないのだと思っています。私は幸い指導者に恵まれました。国士舘大学時代にお世話になった川野一成先生(国士舘中学・高校総監督)、小山泰文先生(国士舘大評議員)、岩渕公一先輩(国士舘高校柔道部監督・校長)の指導方法は当時から非常に説得力のあるものでした。 また強化選手に選ばれるようになって接した前回の東京オリンピックで金メダルを獲得された岡野功先生(流通経済大学名誉教授)や、山下泰裕会長の恩師でもある佐藤宣践先生(東海大学名誉教授)の選手に対する接し方は非常に勉強になりました。私もそうした先生方の話術のレベルに少しでも近づこうと、指導者になってからはいろいろな分野にアンテナを張っています。そして、「これは使える」と思える話の進め方やテクニックはすぐにメモをするようにしています。そうしたものに自分自身のオリジナルな要素を加えて、対象となる選手の特性を見極めて語りかければ、時間はかかりますが力に頼ることなく選手は自然と頑張るようになると考えています。 私は現在、大会事業委員会の委員長を拝命しています。それ以前は強化委員会、審判委員会で活動してきましたが、その頃は大変恥ずかしい話ですが「大会は自動的に開催されている」とすら思っていました。しかし、今はたとえ小さな大会でも、準備をし、開催し、無事に終了するまでに、多くの裏方さんが非常に大変な作業を緻密にされていることが理解できました。そうした仕事をされている方々のためにも、柔道界全体のためにも、これからも微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。公益財団法人全日本柔道連盟大会事業委員長 西田孝弘昭和から令和へ社会の変化に適応しながら柔道界のために尽力していくContents巻頭特集緊急座談会いま、柔道界が考えるべきこと 4特集全日本選手権、皇后盃、選抜体重別3年ぶりに有観客で開催! 12感染対策の様子や舞台裏を公開!Reportイッポン ザ グランプリ結果発表 18誌上セミナー◎新しい熱中症対策 30連載普及の広場~柔道を「続けよう」「始めよう」~ 16やわらたちのセカンドキャリア 20THE柔道人 23L’Esprit du Judoコラボ企画 26海外「JUDO」ホントのところ 28柔道ゼミナール~メディカル編 32柔道ゼミナール~栄養&レシピ編 34委員会インフォメーション 37FROM事務局 463まいんど vol.32

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