の組み合わせによって起こります。柔道でも手をついたときや、ひねったときに手関節に起こる怪我の一つです(新鮮損傷)。しかしながら、野球やテニスのように背屈強制、回外・回内強制、軸圧が繰り返す運動では、外傷を認めずに発症することがあります(変性損傷)。また、加齢による変性損傷によって発生することもあります。外傷を認めずに発症する要因として尺骨が橈骨に対して長くなっている骨の形状または配置異常(plus variance)が挙げられます(尺骨突き上げ症候群)。しかし、長さが同じ(neutral variance)か短い(minus variance)場合でも TFCC損傷を発症しうるとされています。新鮮損傷の場合は、受傷する部位や損傷形態によって分類され、変性損傷は軟化、線維化、穿孔といった形態によって分類されています。【症状および診断】手関節(前腕)をひねったとき、手関節を小指側に曲げたとき(尺屈)に手関節尺側(小指側)に痛みが生じます。安静時痛はないことが多いですが、関節炎症状が強いときに安静時でも痛いことがあります。また、前腕の回旋や手関節の尺屈で痛みが誘発されます。この痛みが運動中に支障をきたして動かせなくなります。具体的には、ドアノブを回すような手首をひねる動作が痛みのため困難となります。診断には自覚症状を聴取し、腫脹、発赤、熱感、手関節変形の有無、圧痛部位(背側、尺側、掌側)、両手関節の可動域制限(手関節掌背屈・橈尺屈,前腕回内外)を確認します。手関節の痛みは腱鞘炎や外傷による手根骨骨折などにも注意しましょう。誘発テストにより症状を確認するほか、X線検査ではTFCC損傷沿ものはわかりませんが、Ulnar varianceを確認します。損傷部位の確認にはMRIが有効です。誘発テストは、どの検査も左右比較することが重要です。他動的に尺屈させる尺屈テスト、尺骨頭を押して尺骨頭が沈む様子かどうかを見るpiano key sign、遠位橈尺関節不安定性は回内外中間位での掌背方向への遠位橈尺関節の不安定性を診るBallot tement test(バロットメントテスト)などで診断します。【治療方法】初期治療としてまずは安静、消炎鎮痛剤の投与、サポーターやギプスなどを用いて手関節に対する保存療法(対症療法)を行います。サポーターやギプスを行った場合、概ね70%の有効率を認める。運動時にはテーピングも有用です。ただし、3か月が過ぎても症状が改善されない場合は、手術療法も検討されます。 関節腔にステロイド注射を行うこともあります。関節内にステロイドを注入すると軟骨が痛む危険性を伴うことがあります。さらに。2022年1月からWADA副腎皮質ステロイドは、内服以外に注射を行っても禁止の対象で、使用する場合は、事前にTUE(治療使用特例)申請をする必要があります手術療法には鏡視下TFCC部分切除術・縫合術、尺骨短縮術が一般的に行われています。手術の選択は損傷部位によって内容が変わります。尺骨突き上げ症候群を伴わずに靱帯損傷・TFCC 損傷の場合は、関節鏡を用いたTFCC 部分切除術、TFCC 縫合術・再建術や関節滑膜部分切除術などが行われています。尺骨突き上げ症候群の場合は尺骨を橈骨と同じ高さにする尺骨短縮術を行う。尺骨短縮術とは骨切り手術で、数㎜を切除し、プレートとボルトを用いて固定する。プレートとボルトは骨癒合した時期、概ね1年以上経った段階で、それを摘出する手術が必要になります。ただし抜去後は骨孔が残るために骨折のリスクがあるので注意しましょう。 【復帰までのポイント】痛みに対しては初期治療として、局所安静や消炎処置で症状が治まることが多いのですが、橈骨-尺骨の長さといった形態がベースにあることがありえます。なかなか痛みが治まらない場合や繰り返す場合はX線検査で確認しましょう。手術を行った場合は手術方法によって運動制限が異なりますので、治療している医療機関に確認しましょう。図4 尺骨短縮術図3 外傷を認めずに発症する要因例33まいんど vol.32
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