まいんど vol.32 全日本柔道連盟
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教育普及・MIND委員会 教育普及部会 文/曽我部晋哉(甲南大学 教授)海外の「JUDO」ホントのところ新たなドイツの指導者資格、『暴力対策柔道指導員』!?22回目 教育普及・MIND委員会では、日本の柔道教育普及活動をより充実させるために、各国連盟の協力のもと、世界の柔道最新事情や取り組みについての調査・報告をしております。前回、ドイツの教育システムの変化に伴い、柔道登録人口が減少していることを報告しました。そのような状況を受け、ドイツ柔道連盟の教育システムも変わろうとしています。ドイツ柔道連盟のさまざまなプロジェクトメンバーとして貢献されているWolfgang Dax Romswinkel氏に、ドイツ柔道教育の今後について聞いてみました。 ドイツでは、「総合型地域スポーツクラブ」が柔道登録人口の中核を担っているが、昨今7歳~14歳の参加者が激減。その原因のひとつに、小学校が、これまでの「半日学校」から「終日学校」へ転換したことによって、時間的に参加しづらくなったことも一つの要因として挙げられる。ドイツと言えば、これまで、参加者にさまざまなサービスを提供し子どもたちの育成を図ってきた。我々の参考となるようなたくさんのツールを開発しており、まさに、教育普及ツールのデパートだった。この年齢層激減のあおりを受け、次にどのような一手を考えているのか聞いてみた。 ドイツの登録人口のおもしろい点は、2000年頃の登録人口最盛期を支えた子どもだった層が、20年経過し27歳以上となった現在も柔道を続けていることだ。そのため、27歳以上の登録人口の割合が比較的高く、現在のドイツ柔道を指導的立場で牽引している。逆に考えると、子どもの登録人口の低さイコール将来の柔道界を支える人材の低下を招き、ひいてはその存続さえも危ぶまれるのではないかと言える。そこで、ドイツは年齢や目的の異なる幅広い層をターゲットに、柔道教育システムの改革に着手している。 現在、昇級・昇段制度についても改革を行っているそうだが、なかでも指導者資格はおもしろい。競技柔道に携わる指導者資格と、生涯柔道のための指導者資格に分かれているのだが、特に生涯柔道資格では、さまざまな目的に応じた資格取得を目指せるようになっている(表1)。少なくとも今年度中には、この制度が導入されるとのこと。資料を見ながら「これは!?」と目に止まったものがあった。「Judo for Violence Prevention:暴力対策柔道指導員」 Romswinkel氏は言う。「もちろん、社会における暴力に対する対策もそうだが、過去に指導者が子どもたちや女性に対して暴力やハラスメントを行ったケースも報告されている。そのため、例えば、男性指導者は女性と寝技乱取はしないなど、指導者に対する、ハラスメントに対する意識向上といった面もこの資格には含まれる」 指導的立場の大人たちが、多種多様な学びとそれに応じた資格を取得できるのは、柔道を継続するための非常に高いモチベーションとなるうえに、幼年柔道指導員であれば、柔道を専門的にやってこなかった女性でも取得できるのではないか。有資格者による質の高い目的に応じた柔道指導が可能となれば、柔道を始める人たちが増え、ひいては柔道人口の増加につながる。なるほど、柔道人口を増やすために、先にさまざまなニーズに対応するための優秀な指導者を育成する。とても良い考えだ。 表1)ドイツの新しい指導者資格制度資料提供:Wolfgang Dax Romswinkel氏

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