巻頭特集緊急座談会身の経験からそう感じます。金野 柔道は歴史を見ていくと、時代毎で形を変えているというか、時代にあったものに変わっていっています。私ごときが大変生意気な言い方になりますが、それが、嘉納師範がおっしゃる『精力善用』だと思うんです。だから、柔道の伝統を守るということは、その時代に合ったものに、常に形を変える、心を変えずにやり方を変えるということ。「今までこうだったから」と形を変えないという考え方が柔道というものの一番の対極にあるものだと思っています。ですので、何かを変えるにしてもそれまでのことが間違っていたということではなく、これからの時代に何をどう進化して精力善用していけるかじゃないかなと、それを柔道家のみなさまとともに考えながら、行動していきたいです。中村 私はそれぞれのジェネレーションに柔道への入り口があっていいと感じています。柔道を始めるきっかけがまずあって、そこから深く柔道に入っていく人生があってもいいし、楽しく柔道と関わる人生があってもいい。きっかけというものが大事だと思います。そうした多くのきっかけを作っていけるような環境を整えていけたらなと考えています。田中 柔道にはたくさんの良さがあります。その良さというのは人によってそれぞれ違います。みんな目標は違っていいと思います。世界チャンピオンを目指すのでもいいし、試合で1回勝つというものでもいい。それぞれの思いに、応えてくれる良さが柔道にはあります。それらを、それぞれの人に提示してあげられるのがいい指導でしょうし、小学生から大人まで、それぞれの目標に応じたステージを提示することが我々に求められているのです。小学生学年別で言えば、「廃止」ではなく「変える」ことです。試合の勝利者を目指すのではなく、人生の勝利者を目指す。そのために柔道の修行があるということをもう一度再確認して新しい小学生学年別を作っていくことが全柔連の使命ではないかと思います。中里 みなさんそれぞれに柔道を愛しているのがよくわかります。ただ、まだ柔道の魅力を多くの人に伝え切れていないのではないかと思います。私が一番衝撃を受けたのは、2015年に少柔協が開催したイベントです。持田達人さんが講師をされていたのですが、「『精力善用』を知っている人?」と250人ほどの小学生参加者に聞いたところ、4、5人しか知らないのです。『自他共栄』も同様でした。その翌年も同じ質問をしたところ、やはり似たような結果でした。『精力善用、自他共栄』すら知らないで柔道を学んでいると言えるのか、これはいかんと思ったわけです。そうした部分に手をつけていきたいと思っています。柔道を始めたらそういうことも学ぶべきではないかと思うのです。小学生学年別でもそうですが、毎月行うリモート錬成においても5分でも10分でもそうした機会を設けていきたい。そういうことも柔道の価値の一部なんだということを学んでほしいと思っております。 みなさん本日はお忙しいところ、ありがとうございました。『精力善用』を知っている小学生が250人中わずか4、5人!柔道の価値、魅力を伝えることが柔道界の課題
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