受けることによって、鎖骨遠位端が肩峰に乗り上げ脱臼し、この関節に関わる靭帯(肩鎖靭帯、鳥口鎖骨靭帯)が断裂します。肩鎖関節脱臼を起こすことで、上肢の運動をしたときに鎖骨は後方の肩甲骨方向へ動くと、鎖骨と肩甲骨が衝突をして肩甲帯の運動を妨げ、肩関節の運動阻害となります。 【診断・治療】肩鎖関節損傷は転位の程度・方向により捻挫、亜脱臼、脱臼に分類されます。捻挫、亜脱臼、脱臼のいずれにおいても肩鎖関節の安静時の痛み、肩鎖関節またはその周囲の圧痛、運動時の激しい痛みと腫れがみられます。特に挙上や外転、外旋以外にも内転動作での疼痛がみられます。鎖骨遠位の偏位の仕方により6つのタイプに分類されます。⃝タイプⅠ(捻挫):肩鎖靱帯の部分的な傷みだけで、烏口鎖骨靱帯、三角筋・僧帽筋は正常でX線では異常はない。⃝タイプⅡ(亜脱臼):肩鎖靱帯が断裂し、烏口鎖骨靱帯は部分的に傷んでいるが、三角筋・僧帽筋は正常である。X線では関節の隙間が拡大し鎖骨の端がやや上にずれる。⃝タイプⅢ(脱臼):肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂する。三角筋・僧帽筋は鎖骨の端からはずれていることが多い。X線では鎖骨の端が肩峰の高さより上に位置する。⃝タイプⅣ(後方脱臼):肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂する。三角筋・僧帽筋は鎖骨の端からはずれている。鎖骨の端が後方に脱臼している。⃝タイプⅤ(高度脱臼):タイプⅢの程度の強いもの。肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂している。三角筋・僧帽筋は鎖骨の外側1/3より完全にはずれている。⃝タイプⅥ(下方脱臼):鎖骨の端が下にずれている非常にまれな脱臼。⃝タイプⅢ、タイプⅤの完全脱臼では鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見える。飛び出した鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動く(ピアノキーサイン)。治療法⃝タイプⅠ(捻挫)は三角巾で手を吊り、始めの2~3日は患部を冷やし、痛みと腫れが引いてきたら肩関節の運動練習を開始します。痛みが引いてくれば練習可能です。⃝タイプⅡ(亜脱臼)は、初期固定を痛みが引いてくるまで行います(目安2~3週間)。その後、可動域訓練と筋力トレーニングを行います。2か月程度で復帰可能です。⃝タイプⅢ(脱臼)では、保存療法と手術療法で意見が分かれますが、手をあげた位置で力が入りにくくなるとも言われ、整復と靭帯を修復する手術が行われます。靭帯が修復できないと押さえていても鎖骨遠位端は上に跳ね上がったままになります。⃝タイプⅣ、タイプⅤ、タイプⅥでは筋肉や関節運動への影響が大きいため手術が選択されます。手術の方法はいろいろあり、最適な方法は確立されていませんが、靭帯を修復する手術法が術後成績もよいと言われてきています。【鑑別しなければいけない外傷:鎖骨遠位端骨折】肩鎖関節損傷(脱臼)と間違いやすい外傷として鎖骨遠位端骨折があります。鎖骨遠位端骨折は鎖骨骨折の10 %程度に見られます。なかでもNeer分類でタイプⅡである烏口鎖骨靭帯が内側の骨片より剥がれたものは、不安定性が強く整復支位の保持が難しければ手術の適応となります。29まいんど vol.30
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