まいんど vol.29 全日本柔道連盟.
6/52

[ 特 集 ] 東京2020オリンピックしきれなかったことが挙げられる。また、団体戦では、決勝で敗れたフランスチームは、個人スキルが非常に高かったことやリネール、アグベニュー両選手を中心に素晴らしいチームワークを持ったチームであった。正直、すべてにおいて完敗であったと認めるしかない。そのなかでも勝機を見出すことは可能であったが、取らなければならない場所で取り切れなかったことが大きな敗因であった。今後は確実に4ポイント(4勝)を挙げる選手、チームを作り切ることが大事だと感じる。 しかし、個人戦で敗れた2選手、団体戦でチームのために全力で戦ってくれたリザーブも含めた選手たちはよく戦ってくれたと思う。心から敬意を表したい。 今後の課題は「最重量級の再建」、「団体戦の王座奪還」など山積みである。テクニカルな課題、中長期的強化方針、選手をはじめ、コーチ、所属先とより一層の連携を図り、さらなる発展のために努力し続けていかなければならない。そのためには今まで以上に日本柔道界は一丸となって前に進んでいく必要があると感じる。 最後に、東京オリンピック開催に向けて感染症対策を施し、安心安全に大会を終えることができたことは、準備と運営に携わっていただいたすべての関係者のおかげであり、心からの感謝を申し上げたい。そして、誰もが予想できなかった未曽有の事態のなかで迎えた東京リンピック開催であったが、選手たちは気持ちを切らさずにひた向きに自分の目標のため、支えてくださった多くの方々のために戦ってくれた。また、常に温かく、ときに厳しく指導をしていただいた担当コーチとサポートスタッフの方々、全日本の活動を信頼し、お互いが協力し合える環境を常に作っていただいた所属関係者のみなさま、さらにコロナ禍のなかで大変な状況であったにも関わらず、心からご支援、ご声援を送り続けてくれた方々のおかげで戦い抜くことができた。そのような環境で監督を務めさせていただいたことは私の一生の誇りであり、心から感謝申し上げたい。 今後におかれましても、引き続き全日本強化チームへ変わらぬご支援、ご声援のほど、よろしくお願いいたします。 1.はじめに 2021年7月24日から7月31日まで、東京九段下の日本武道館で東京オリンピック柔道競技が開催され、128の国と地域から393名(男子201名、女子192名)が参加し、男女それぞれ個人戦7階級と大会最終日に男女混合団体戦が8日間の日程で行われた。新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックの1年延期が昨年3月に決定し、選手たちはこれまで経験したことがない不安と葛藤を抱えながらも目標を失うことなく、準備して迎えた東京オリンピックと全日本女子チームの5年間の取り組みについて振り返ってみる。2.試合 女子については「個人戦金メダル3個以上、全階級メダル獲得」、「男女混合団体戦金メダル」を掲げて本大会に臨んだ。その結果、個人戦においては金メダル4個、銀メダル1個、銅メダル1個を獲得することができた。金メダルを獲得した4名については、掛け急ぐことなく終始組み手にこだわり、安定した間合いで試合を運ぶことができた。また、立技から寝技への移行も確実に実践し、隙のない戦い方であった。一方、金メダルを逃した3名については、自分のペースで試合を進めながら、相手の間合いになったところで一瞬の隙を突かれてポイントを奪われた。攻撃と防御のメリハリをつけることができなかったことが悔やまれる形となった。また、大会最終日には男女混合団体戦が行われ、決勝でフランスに敗れて銀メダルであった。私自身は、監督としてこれまで4度の世界選手権大会で男女混合団体戦を経験してきたが、改めて「引き分け」がない団体戦の難しさを痛感させられた。とくに、チームがポイントをリードされた場面で出番が回ってきた選手には、はやる気持ちを抑え、勝ち急ぐことなく粘り強く戦うことをフランス戦で学ばせてもらった。3.5年間の取り組み 2016年監督に就任して以来、全日本女子チームとしての強化目的や方針は一貫して、オリンピックおよび世界選手権大会での「勝利」であることは言うまでもない。「勝利」を勝ち取るために必要なことは選手の競技力を高め、オリンピックおよび世界選手権大会などの試合で、効果的に自分自身のパフォーマンスを発揮し、選手、コーチ、スタッフ全員が勝利を達成するための組織として、日々研鑽していくことであると考えていた。また、全日本チームは、日の丸を背負う責任を持つことが重要であり、競技力のみに特化せず、人間力を究めることも柱にしながら強化に取り組んだ。その結果、選手たちはフィジカル面および技術面の向上のために、ひたむきに準備をする誠実な姿勢や世界で勝つために努力する姿を体現してくれた。4.おわりに 賛否両論あるなかで開催された東京オリンピックが無事に終えることができた。これも大会組織委員会ならびにボランティア、医療従事者などの多くの関係者のご尽力の賜物であり、心からお礼を申し上げたい。また、この5年間全日本女子チームを応援してくださった関係各位に感謝を申し上げ、本稿の末筆とさせていただく。女子監督増地克之MASUCHI Katsuyuki東京オリンピックの総括5まいんど vol.29

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る