まいんど vol.29 全日本柔道連盟.
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教育普及・MIND委員会 教育普及部会 文/曽我部晋哉(甲南大学 教授)海外の「JUDO」ホントのところ柔道は「器用」なスポーツだと世界が注目! 日本では? 19回目教育普及・MIND委員会では、日本の柔道教育普及活動をより充実させるために、各国連盟の協力のもと、世界の柔道最新事情や取り組みについての調査・報告をしております。2021年8月、東京オリンピック・パラリンピックの柔道競技も無事に終了しました。みなさんも選手たちの素晴らしい活躍がまぶたの裏に焼き付いて、依然興奮冷めやらぬといった状況ではないでしょうか。これを機に、柔道を志す少年・少女が増えてくれることを願っています。さて、子どもたちが習い事を始めるときに、最終決断をくだすのはお父さん、お母さんです。実際に我が子に柔道を習わせている保護者の方々は、柔道についてどのようなイメージを持っているのでしょう。今回は、各国で柔道のイメージに違いはあるのかを調査した結果をレポートします。 日本での子どもの習い事NO.1は水泳だ(学研教育総合研究所, 2019)。5歳~9歳の子どもの「不慮の事故」で亡くなる原因として、1番目が交通事故、2番目が溺死(厚生労働省, 2018)ということを考えると、島国の日本ではその重要性はうなずける。では、5歳~9歳の子どもたちが、自ら「水泳を習いたい」、という意思表示をしているかと言えばそうではない。習い事を決めるのに最も影響力を与えているのは母親だという(学研:前出)。やはり習い事の選択は、親の価値観に大きく左右されることは間違いない。したがって、すでに柔道を習わせている保護者は、柔道に対して「習わせる価値がある」と思っているはずだ。その価値は何なのか? 国により違いはあるのか? 今回は、各国の柔道クラブの協力のもと、柔道についてどう思っているのかを調査してみた。 各大陸の代表的な4か国を選んでグラフ化した(図1)。アンケート調査により「あなたは柔道、柔道選手についてどのように思いますか」という項目に対して、選択式で回答したものだ。各項目に対して100%であれば、全員がそう思っているということになる。 各国ともに、柔道に対して「礼儀正しい」という認識を持っているのは、武道ならではの特徴だろう。しかし、なんと日本では柔道に対して、「器用」つまり、身のこなしが素晴らしいと感じている人はどの国と比較してもあまりにも低い。反対に、諸外国では柔道は「器用」だと思っていて、相手を投げたり、受身をしてケガをしなかったり、こんなふうになりたい! と憧れている節があるのだ。 もちろん、柔道は「礼にはじまり、礼におわる」礼儀正しさは一番の象徴だろう。しかし、「柔よく剛を制す」この身体の使い方こそ、柔道の醍醐味ではなかろうか。さらには、日常生活やスポーツ活動で転倒しても受身で身体を守ることができる。私たちはもっと、柔道の持つ「器用さ」の部分を伝え、ひいては子どもの習い事として欠かせないものの一つになるよう広めていかなければならないのではなかろうか。図1 あなたは柔道、柔道選手についてどのように思いますか?

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