[ 特 集 ] 東京2020パラリンピックることを目的とした練習を行っています。視覚障害者柔道に一番必要で大切なものです。 コロナで1年延期となり、選手たちの柔道に対する姿勢は随分変わりました。しかし、まだまだ見直さなくてはいけません。やはり1番になるためには、柔道で勝つことだけを何よりも優先して考え生活しなくてはいけないと思います。海外の強豪と言われる選手たちは、すべてにおいて真面目で謙虚です。具体的には、柔道の練習というより、身体づくり、フィジカル・トレーニングを徹底して体力の強化と持久力を付けることを目的とした練習を行っています。今までも課題はフィジカルだと伝えてきましたが、できていませんでした。今後はフィジカル・トレーニングの専門家をスタッフとして加えていきたいと思っています。 視覚障がい者柔道は組み合ってからの開始となることから、柔よく剛を制すと言いますが、体力の勝る選手が優位性を保つ試合内容となっています。また常に組み合っていることから、いつでも技を仕掛けることができる状態が多く、一瞬たりとも油断したり相手に隙を与えたりすることができません。全体を通して一本勝ちの割合が70%前後と非常に高くなっています。さらには、一本勝ちのなかでも寝技で決まることが多く、立ち技から寝技へ移行して確実に一本をとることに徹している姿勢が見られます。視覚障がい者柔道は、離れると「待て」がかかり、中央の開始線まで戻って「組み方」から再開します。組んでから始まるため、一度つかんだら離さない握力も必要です。 女子としては残念ながら金メダルの獲得はできませんでした。銅メダルは獲得したものの1個のみで決して納得のいく結果ではありません。3位決定戦で敗れた階級が3階級あることから、あと一歩力及ばずと悔やまれます。 男女の強化委員長兼女子監督としてチームを率いてきた立場から責任を痛感しております。しかしながら、選手たちのコロナ禍のなか取り組んできた道のりや、強豪外国選手を相手に必死に戦い抜いた試合は、次のパリに繋げられるものであり、勝敗に関わらず応援してくださった多くのみなさんに示すことができたのではないかと思っております。コロナ禍だからこそ、敬意と感謝の気持ちを持つことの大切さを選手たちは再度学ぶことができたと思います。当たり前であることに感謝することが一番大切であると考えています。 次のパリ大会までは3年しかありません。課題は明確です。基本を大切に身体づくりから行う必要があります。選手の高齢化も進み「選手発掘・育成」も急務となっております。今回東京で開催されたことで、報道による認知度のアップにつながりました。これを契機として、「視覚障がい者柔道の理解」と「選手発掘」の活動を精力的に行い、底辺の拡大と即戦力の選手を求めることが近々の課題です。 最後に、東京パラリンピックに向けた5年間のご支援、ご協力をいただきました多くのみなさまに感謝申し上げます。それとともに、3年後のパリに向けなお一層の努力をしていきますので、みなさま方のお力添えをよろしくお願いいたします。 東京2020パラリンピック大会柔道競技は、8月27日から29日の3日間にて、日本武道館で開催されました。男子は7階級出場し、4個以上のメダル獲得と全階級入賞を目指して試合に臨みましたが、出場選手全員が入賞したものの、銅メダル1個という厳しい結果に終わりました。この結果はリオデジャネイロ大会以降強化に当たってきた監督の責任であります男子監督遠藤義安東京パラリンピック柔道男子総括▶男子66㎏級で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎日本選手団。選手村にて17まいんど vol.29
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