まいんど vol.27 | 全日本柔道連盟
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委員会 Information教育普及・MIND委員会 形部会 柔道の練習方法は、既定の攻撃に対応する「形」と不定の攻撃に対応する「乱取」の2つがあります。それぞれ長所と短所があり、両者を学ぶことによって柔道の技の本質を体得できると考えられています。 講道館柔道の形では、主に7つの形を行っております。 『投の形・固の形・極の形・柔の形・講道館護身術・五の形・古式の形』です。今回は「柔の形」について、形部会副部会長の永井多惠子氏より解説させていただきます。 みなさんは『柔の形』についてどのようなイメージをお持ちでしょう。⃝ゆっくりした動きの形⃝相手を投げない形⃝体操みたいな形 柔の形は嘉納治五郎師範が講道館創設後まもなく、明治20(1887)年頃にお作りになった形です。当初は10本ほどで『体操の形』とも称されていました。その後現在行われている15本になったと言われています。ということは、みなさんが見ている、あるいは稽古している柔の形は130年以上の歴史があるということです。 師範はなぜ柔の形をお作りになったのでしょう。講道館の門人が増え指導に目が届かなくなると、無理な動作で稽古をする者がでてきた。そこで師範は正しい身体動作、柔よく剛を制するという柔の理にかなった動きを形で稽古し体得させようとしました。無理なく静かに、滑らかに身体を働かせる、それまでの投・固・極といった形とはまったく異なる形として柔の形を作ったのです。柔道衣を着て柔道場で投げ、固めあるいは武器を使って突くといった動作でなされていたこれまでの形の概念ではない新たな形の創出です。つまり、柔道衣を着なくても柔道場でなくても、投げたりせず、初心者でも老若男女だれでも、柔らかく静かな動作で真剣勝負の稽古ができる形の出現です。ここが、師範が存分に思いを発揮したところでしょう。相手の力に順応して勝を制するという柔の理がすべての動作の根底にあります。 現行の15本は第1教から第3教まで各5本ずつで構成されています。なぜこのような分類なのか、順番は難易順と関係があるのか、また当初は10本で構成されていたということですが、増えた5本はどの技なのか解明されていません。動きのなかには古式の形をもとにした箇所もみられます。師範のもうひとつの工夫は最初に『体操の形』と言われていたように、柔道を体育として考える、つまり普段の乱取稽古にはない筋肉の伸長をはかるという動き、それも相手によってなされるという動作があるというのもまた柔の形の特長といえるでしょう。 みなさんが柔の形を稽古する際に嘉納師範がどこを工夫されたのかを発見することができたら一層楽しい稽古となるでしょう。師範は形を稽古する順序は先ず柔の形から初めるのが良いと述べられています。まだ柔の形を稽古したことがない方、乱取と併せて柔の形の稽古を始めてみませんか。

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