マレーシアOSコース(小俣幸嗣氏)報告(10.5.18)
1 日程
201年4月3日(土)— 9日(金)
往路:4月3日 10:50 成田発 JL723
4月3日 16:00 クアラルンプール着
復路:4月8日 20:50 クアラルンプール発 JL724
4月9日 06:30 成田着
2 派遣国
マレーシア(クアラルンプール)
3 会場、ホテル
会場:OCM(マレーシアオリンピック委員会)会議場、仮設道場
ホテル:オリンピック・スポーツ・ホテル
OLYMPIC SPORTS HOTEL
JALAN HANG JEBAT, 50150 KUALA LUMPUR, MALAYSIA
4 講師
小俣幸嗣 8段 筑波大学
5 講習内容
4月4日(日) 9:00 開講式
9:15 理論「崩しと重心、体さばきと移動のしかた」
10:00 実技 投の形「真捨身技」
14:30 柔の形1教
16:00 打ち込みの理論と実技(引き出しによる)
17:00 柔の形1教演技
4月5日(月)
9:00 柔の形復習
10:00 投の形「横捨身技」
11:30 投の形 DVD捨身技
14:30 柔の形2教
17:00 1、2教通し演技
4月6日(火) 9:00 柔の形3教
11:30 柔の形 DVD
14:30 打ち込みの理論と実技(横移動、相四つ、けんか四つ)
15:30 投の形(足技)
17:00 柔の形DVD(SEA Game)
4月7日(水) 9:00 投の形、柔の形DVD(世界選手権大会2009)
10:00 受講者演技会撮影
11:00 映像検討会
14:30 投の形(腰技、手技)
16:00 DVD(投の形) SEA Game
17:30 自由練習
4月8日(木) 9:00 移動打ち込み
9:30 柔の形演技の復習
10:00 IJF世界形選手権大会要項、IJF形競技ルール、IJF審査要領
11:00 IJF世界選手権大会演技DVD
11:30 閉講式
* SEA Games =South East Asia Games (乱取試合のほか、2007年から投の形、柔の形の形試合が行われている)
6 受講生
全国の各県から選抜されてきた約30名
7 報 告
1) 再 訪
私は1983年に講道館派遣の指導団の一員として、安部一郎現参与、東行雄現総務部長とともに一週間、訪れているので実に27年ぶりの再訪となった。この間、アジア諸国は急激な経済成長をとげている。立派な空港では、前マレーシア連盟会長で前JUA財務総長のジョニー・クー氏、ヘッドコーチで7年も講道館で修行したテフ氏の迎えを受けた。空港から1時間ほどしてクアラルンプールに入ったが、超高層建築が目を引く。至極当たり前のことである、街が驚異的に変貌している。日本人も含めた柔道関係者と食事をするというので、ホテルに寄らず会場に直行した。ビルの谷間にある天井のない中華系レストランで、有名な「スチームボート」という料理をごちそうになった。長期でここに滞在しゴルフ場を経営する坂元英郎氏、視覚障害者柔道にも携わる小林氏、南アフリカでの経験もある柏木氏ら現地の日本人指導者と、現地の事情や柔道を取り巻く内外の話題をお聞きした。その後ホテルで、テフ氏と講習に関して打ち合わせた。
2) 道 場
朝8:30道場での開講式という予定だったが、集まりが悪く、実質的に9時に始められた。予想されたことではあるが、私も少なからず経験があるので、心配するテフ氏を横目にのんびり待った。道場とはいっても、多目的に使えるホールの床に、そう厚くもない欧州製畳を直接敷き、中央の柱を避けながら動いた。その脇には机、椅子が並べられ、プロジェクター、スクリーンがセットされており、実技を終えて、すぐに DVDで確認することができた。
午後は3時間半と長かったので、4時を過ぎた頃、甘い紅茶と揚げバナナがでた。通常だとこういうときは話が盛り上がり長くなることもあるが、ここではきっかり10分だった。それにしても、午前3時間、午後3時間半、1日6時間半の指導は未曽有の経験であった。
3) 講 習
今回の指導内容については、テフ氏が張り切って考えたようで盛りだくさんだった。「打ち込みを中心とする崩しの理論とその方法について」と「形」の実技としてあったので、まずはレベルを見るために移動打ち込みを準備運動に代えてやってみた。予想より水準が上だったので、ホワイトボードをつかい、“崩しと体さばき”さらに自他の“間合い“について、足の位置を図示しながらいろいろなかたちを説明した。そして、体現はできても、理屈で説明されたり、あるいは生徒に説明することはないだろうと考えて、とにかく納得してもらえるよう動いてもらった。
やはり受が剛体を作って維持できないために、取が間合いを取れず、初級の施技のように、腰が曲がってしまうものが目だった。お互いがかみ合わないのである。そこで、問題を指摘したうえで、実技で理解させようと「形」に移った。
4) 形
形は投の形、柔の形のほか護身術も当初の希望にはあったが、SEA Games で採用されている投の形、柔の形をきちんとやるのがよいと考えて、これらに時間を割いた。投の形は捨身技から始めた。元気のあるうちにどんどん投げたいからである。
途中で顧問のジョニー・クー氏から、6月にはマレーシア形選手権大会を初めて開催するので、受講者のなかから審査員にふさわしい人を選ぶようにいわれた。そこで柔の形に関しては、心許ない状況だったので、じっくり時間をかけ各人が演技できることを目標に取り組んだ。演技は三教のうちからひとつを選んで受と取をやらせ、ビデオに記録し、それを再生して見せた。技5本とはいえ、全員となると1時間を超える。見るときも同じである。形とはいえ、エアコンの中にあっても皆さん大汗をかいての練習であったことも付け加えておきたい。
5) 携帯型電子機器
講習会で私の演技や解説がVTRに撮影されるのは珍しいことではないし、今回もそうであった。しかし、受講生が携帯電話式の新通信機器で動画撮影をし、練習中に不明な部分を再生してお互いに確認している姿に強い印象を受けた。その簡便さに感心するとともに、今後、学びの方法が変わってしまうのではないかというある驚異を感じたのである。当然、指導者の情報の与え方にも関係してくるからである。
6)おわりに
短期集中型の講習ではあったが、疲れもそれほど感じることなく終えることができたのは、適度な規模と熱心な受講生達に因るところが大きい。なかでもIJFの審判員でもあるリー・キム・セン氏は形の審査員資格ももっており、質問も活発であった。昨年は、SEA Games (形競技の部)にも参加していないこの国が、形の国内選手権大会を始めるというのはうれしいニュースである。その成功を願うとともに、将来の国際大会への進出を期待して報告を終える。