講道館女子部指導員として長年にわたり柔道指導にご尽力されてこられました梅津勝子さんが、故福田敬子さんに継ぎ女性で2人目の九段に昇段され、女性柔道家たちによる祝賀会が七夕の7月7日(土)、都内のホテルにおいて開催されました。
会には八段の石橋桂子さん、秋山澄子さん、若松節子さん、第1回世界女子柔道選手権代表の竪石洋美さん、笹原美智子さん、山口香さん、ソウル五輪代表の田辺陽子さん、北田典子さんをはじめとした、日本女子柔道の草創期を支えた女性たち30名が集合。懐かしい思い出話に話を咲かせ、後輩代表として「次は女性初の十段を目指してください」という山口さんの挨拶で締めくくられました。
梅津勝子九段 コメント
『私が小学5年生のときに終戦を迎え、禁止されていた武道が解禁になった中学1年生のとき柔道を始めました。とはいえ、いまのように簡単に女性の入門が許される時代ではありません。近くに古武道を教えている「隻流館道場」があり門を叩いたのですが、「女だてらに柔道なんかやるんじゃない」「なんのために女がやるんだ」と断られました。当時の女性は『三従の教え』、子どものときは親に、結婚したら夫に、老いたら子どもに従えと教えられていた時代で、男性たちには女性が柔道をやるなど考えられなかったからでしょう。
そんな時代でしたが、私があまりにも粘るので仕方がないと、門を叩いてから3ヶ月が過ぎた頃、「柔道をやっていい」という許可をもらいました。そのときに言われたことは、「男と同じところで着替え、素肌でやれ」ということ。裸で柔道衣に着替えて練習しろと言われたわけです。当時の私はまだ子どもだったので気にしませんでしたが、先生たちのなかには問題なのではないかと感じられた方もいらして、柔道衣にヒモをつけるということになりました。しかし、これは稽古を始めるとすぐにバチッと切れてしまいました。次にさらしをつけるということになったのですが、1回ジャンプするとストッと落ちてしまいました。そんな試行錯誤をしていたとき、ある他道場の先生から「女の子はシャツを着てやっている」ということを教えられ、柔道衣の下に下着を着ることが許可されたという経緯がありました。
そんな私も今年で84歳になりました。柔道を始めてもう70年です。こうして生きているということは、私にはまだやらなければいけないこと、使命があるのだろうと考えています。
子育てが終わった女性柔道家のみなさんが戻ってきてくれる日を講道館で待っています』