中長期基本計画
公益財団法人全日本柔道連盟 中長期基本計画(2020年度~2028年度)
【2020年度第4回理事会(2020.10.22)決定】
1.中長期基本計画
(1)競技力向上
組織として目指すところ
我が国は柔道発祥の国であり、競技力においても世界最高水準を維持することが多くの国民から期待されている。競技力を評価するために何を基準とするかは意見のあるところであるが、最も重要視すべき基準をオリンピックにおけるメダル獲得数とする。
本計画期間中に目指すところとしては、 東京オリンピック(2021年開催)、パリ・オリンピック2024年開催)、ロサンゼルス・オリンピック(2028年開催)において、出場国の中で最も多く競技成績優秀者(3位以上)を輩出することを目指していく。
現状分析
過去に出場した全てのオリンピックにおいて、出場国の中で最も多くの競技成績優秀者(3位以上)を輩出してきた (公開競技を含む)。
達成目標
今後開催される全てのオリンピックにおいて、出場国の中で最も多くの競技成績優秀者(3位以上)を輩出する。
戦略課題
現状と達成目標とにギャップはないが、競技人口が傾向的に減少する中で、如何にして競技力の質・量を維持するかが課題となる。
課題解決のための戦略及び実行計画
戦略的観点からは、基盤強化のための普及活動と直接的な競技力向上のための選手強化活動とが必要になる。また、選手の所属組織との緊密な連携が重要であるため、理事及び評議員に実柔連、学柔連、高体連、中体連の代表を加えている。
普及活動については、別項のとおり。
選手強化活動については、オリンピックごとに強化計画を策定し、強化を図っていく。この強化計画では、大会(国内、国際)、合宿(国内、海外)、その他の強化活動 が計画される。大会は、所属別のもの(小学生、中学生、高校生、大学生、実業団)と年層別のもの(カデ、ジュニア、シニア)があり、大会における成績が勘案されて強化選手を選考する仕組みが構築されている。合宿は、年層別に年少者競技力向上合宿、ジュニア合宿、シニア合宿が実施される。また、国際的な競争力向上のため、海外の選手を国内へ積極的に受け入れている。
また、他競技の選手で適性のある者を柔道へ取り込むことも検討する。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
オリンピックイヤー以外の年に開催される世界選手権をマイルストーンとして、計画と実施状況を検証し、必要に応じて計画を修正する。
(2)普及
組織として目指すところ
柔道は単なるスポーツではなく、人づくり人間教育の手段である。この柔道の価値を一人でも多くの人と共有することを目指す。
現状分析
全柔連登録者数は、傾向的に減少している。
障がい者柔道の振興については、相応の成果を上げている。
達成目標
全柔連登録者数の減少を、該当年齢人口の減少と同程度に止める。
戦略課題
学校に「柔道部がない」「柔道部があっても指導者がいない」ことを背景に、中学生、高校生において特に登録者数減少が著しいので、まずはこの年層の登録者減少に歯止めをかけることが課題となる。
課題解決のための戦略及び実行計画
未就学児・小学生、中学生・高校生、大学生、社会人とそれぞれの年層で普及振興策を展開する。
- 未就学児・小学生
未経験者への導入教育の形式知化
小学生以下を対象とする柔道教室のノウハウ共有
柔道指導と併せて学習指導を実施する柔道学童保育の実施の検討
基本動作 と基本的技能の 体得 を指導方針とする - 中学生・高校生
「中学校・高校で続けよう・始めよう」運動の全国展開
柔道をトッププライオリティーとしない生徒に目標を与え、稽古のインセンティブとする
目標設定と達成への努力を指導方針とする - 大学生
資格取得を推進し、卒業後も柔道に関わり続けるインセンティブとする
「柔道を知っている先生」を育成する(教員志望者への支援、全国国立大学大会への支援を通じて教員志望者作り)
形の習得を促進する環境の整備を検討する - 社会人
生涯柔道実現のためのベテランズ大会振興(特に地区ベテランズ大会の展開)
女性が柔道に関わり続けられる環境を整備する。
・加盟団体に対し女性役員の登用を慫慂
・大会における託児施設の設置
警察、自衛隊、消防等とも連携して幼年、青少年の育成に努め、裾野の拡大を図る。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
年度末の登録者数によって計画と実施状況を検証し、必要に応じて計画を修正する。
(3)マーケティング
組織として目指すところ
財務基盤を安定的に維持するため、スポンサー群の維持・拡大を目指す。
現状分析
連盟の収支は安定的に均衡していたが、新型コロナウイルス感染症の影響でスポンサー企業の業績が悪化し協賛金収入が大幅に減少すること、同じく登録会員数が伸び悩み登録費収入が減少することから収支不味となる見込みである。
達成目標
強化・普及のために十分な財務基盤を構築する。
戦略課題
将来にわたって均衡を維持していくためには柔道に関する情報発信が欠かせない。効果的な情報発信ツールの開発が課題である。また、マスコミに対しても引き続き情報を発信する必要がある。
課題解決のための戦略及び実行計画
広告代理店と協働して現在のスポンサー別商品カテゴリーを精査し、新たなスポンサー獲得を図る。
従来の単発的なマーケティングを高度化し、新たな収益源を開拓する。
発信すべき情報とその発信先を見極め、コミュニケーションツールへの機能マッピングを精緻化する。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
決算時に収益構造を分析し、必要に応じて計画を修正する。
(4)ガバナンス
組織として目指すところ
適時適切な連盟統治が可能となる会議体と規程類の体系を構築・維持する。
現状分析
評議員会、理事会、常務理事会、全国代表者会議等の会議体の体系化がなされており、法令に適合した権限分掌が確立されている。
ガバナンスに必要とされる規程類は整備されている。
ただし、国際業務の重要性の増加等社会の要請の変化に対応しつつ、理事会における監督機能を引き続き強化していく必要がある。
達成目標
今後も社会の要請の変化に応じて体制を見直し、ガバナンスの強化に向けた体制の構築を図る。
戦略課題
社会の要請の変化を即時に把握し、対応していくことが課題である。
課題解決のための戦略及び実行計画
外部理事・評議員及び女性理事・評議員について員数の目標割合を設定し早期の達成を図る。
現在すでに構築されている弁護士、公認会計士との連携体制を維持するとともに、事務局においてもガバナンス及びコンプライアンスに係る知見を有する人材の確保・育成を図る。国際業務の情勢、国内外における法令、ルールの改正等社会の要請の変化を把握するため、常に情報収集に努める。監督機能を強化しつつ、迅速かつ効率的な業務執行を図るために 従前にもまして業務の合理化及び効率化並びに業務量に即した適正な人員配置に努めるとともに、職員の能力向上及び多能化を実現するため、人財育成プログラムを整備する。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
スポーツ団体ガバナンスコードに係る自己評価または適合性審査において、ガバナンス体制の不備が発見された場合は即時に対応措置を講じる。
2.人材の採用及び育成に関する計画
人材採用・育成
組織として目指すところ
国際柔道連盟(IJF)において、理事、審判スーパーバイザー、メディカルコミッショナーのポジションを確保する。
事務局については、管理部門(総務、経理、財務、登録、広報)と事業部門(強化、普及、大会運営、国際関連)にバランスよく配置できる人材のプールを確保すべく、男女ともに人材育成を実施する。
個々の職員について、柔道の中央競技団体であることに鑑み、柔道の競技経験を有する職員に関しては、指導員、審判員の資格取得を促進する。競技経験のない職員に関しては、簿記等の専門的資格の取得を促進する。
現状分析
IJFにおいて、理事、審判スーパーバイザー、メディカルコミッショナーのポジションを確保している。
事務局について、現状では各部門に人材を過不足なく配置しているが、各担当者の多能化が不十分で、人事配置に硬直性がある。
職員の資格取得状況の把握が十分でなく、効果的な資格取得促進策も実施できていない。
2019年世界選手権東京大会、2020年東京オリンピック(2021年に延期)に対応するために職員を採用したため、当面は新たに職員を採用する計画はない。
達成目標
将来にわたって、IJFにおいて、理事、審判スーパーバイザー、メディカルコミッショナーのポジションを確保し続ける。
事務局について、各担当者の多能化を進め、しなやかで筋肉質な事務局体制を構築する。
柔道の競技経験を有する職員に関しては、C指導員、C審判員以上の資格を取得せしめる。
戦略課題
IJF関連
理事:IJF執行部と緊密にコミュニケーションをとれる人材の確保
審判スーパーバイザー:柔道競技と審判規程に通暁し、英語でコミュニケーションがとれる人材の確保
メディカルコミッショナー:柔道に係る医療情報に通暁し、英語でコミュニケーションがとれる人材の確保
事務局関連
各担当者の多能化を進めるため、足元の生産性をある程度犠牲にしても計画的に人事異動を実施する。
職員関連
職員の資格保有状況の把握と取得促進計画の策定。 勤続年数が短い若い女性職員が多いこともあり、管理職の女性が少ないが、若手職員、特に女性職員の育児等との両立を図りつつ、キャリアアップが図れるよう留意する。
課題解決のための戦略及び実行計画
IJF関連
審判スーパーバイザー:次世代の候補者を連盟で雇用し、計画的に育成する。
メディカルコミッショナー:経験ある医師の英語コミュニケーション能力を伸長する。
事務局関連
オリンピックを節目とする中期的人材配置計画を策定する。
職員関連
資格取得を促進する手目、指導員、審判員、段位、その他の資格に関して資格手当制度を導入する。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
事業年度ごとに成果を評価し、必要があれば計画を変更する。
3.財務の健全性に関する計画
財務健全性
組織として目指すところ
各事業に必要十分な資金を供給し得る強固な財務基盤を構築する。
現状分析
財務運営の基本的スタンスとして、収入の範囲で支出する方針であるため、極端な資金不足は生じない構造である。
ただし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な収入減少が生じ、収支不味となる見込みである。
達成目標
強固な財務基盤に永続性を付与する。
戦略課題
補助金・助成金に依存する率が高く、事業はそれらの交付状況に強く依存している。
ただし、固定費率は高くなく、突発的な事情がなければ収支が破綻する可能性は低い。
課題解決のための戦略及び実行計画
大会事業
スポンサー開拓を推進し、個々の大会の収支均衡を目指す。
強化事業
事業の費用対効果を検証し、効率的な運営を目指す。
普及事業
収入の範囲内で実行できるように、事業を厳選する。
計画・実施・検証・見直しのプロセス
年度決算を吟味しつつ、収支予算を変更する。
年度開始までに収支予算を策定し、補助金・助成金の交付予定を見極めた上で、9月を目途に修正予算を策定する。