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指導者としてのやりがいは生徒の意欲を感じるとき

――フランスで2年間を過ごしたのち、スイスへ移られました。スイスへ行かれた理由は。

フランス柔道連盟の顧問からスイスのJUDO KWAI LAUSANNE(ローザンヌ柔道会)で日本人指導者を探しているからに行ってみないか、と言われましてね。1964年の東京オリンピックのチームにも入っておられた三上和広先生の後任に、という話でした。
フランスでは週末に各地の町道場で技術練習をしに行ったりしていたんですが、訪れた先々で、みんなまじめに聞いてくれるんですね。それこそ高校の教育実習と正反対。小さい方から年配の方まで真剣になって聞いてくれるんです。
指導者がやりがいを感じるのは、生徒たちが集中して私のことを見てくれるときなんですね。柔道に興味があって心の底から習いたいという気持ちはこちらにも伝わるんです。スイスで指導するのは柔道クラブという話だったので、そういうやりがいや楽しさがあるだろうと思って、それで決めました。ローザンヌはフランス語圏だし、いいかなと思いましてね。

――スイスで指導を始められてみて日本とスイスではどんな点が異なると思いましたか。

日本では学校の部活動が主体ですが、こちらでは民間の柔道クラブがほとんどです。ですから、年代もレベルも混ざって練習することになります。年齢に関わりなくつながりはできるのは良いことですが、年代に応じた練習はあまりできないんですね。こうしたこともあって、JUDO KWAI LAUSANNEでは、子ども用の初心者コースを作ったりして、それぞれのレベルに応じた指導ができるようにしていきました。500人も生徒がいるのですが、子どもから大人まですべての授業を持たされて、すべて私のやりたいようにやらせてくれました。
柔道の違いということで言うと、日本人は技をかけるときに力を抜くけれども、こちらの人は力を入れる。日本人はきれいに投げることを重視するけれど、こちらは投げる形はこだわらない。そういうところが大きく違います。でも、こちらの人も本当はきれいに投げたいんですね。だから日本人の柔道はモデルであり憧れなんですね。

――指導にあたって、特別に力を注がれたことはどんなことですか。

スイス柔道連盟の役職につくということです。指導者資格を取ったり、昇段試験の審査官になったり、勉強しました。最初の1年半は地元の大学のフランス語コースに通い、読んだり書いたり、話をしたりすることができるようになりました。
そんなふうにしているうちにあっという間に2年の契約期間が終わりに近づき、もう少し続けていきましょうということになり、そこから知らないうちに42年。少し長くいすぎたような気がします。2年前に退職したあとは、週に1度は道場に出て、それ以外は各国で主に指導者向けのセミナーをやったりしています。JUDO KWAI LAUSANNEには、私の後任として筑波大出身の島達人先生が来られて、指導にあたっておられます。

 

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