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大会情報

講道館杯総評~ジュニア選手が大活躍~

世界への登竜門である講道館杯。この大会は、平成29年度後期の全日本強化選手、12月のグランドスラム東京への出場権、そして来年の世界選手権代表の第1次選考会など、選手にとって様々な意味で重要度が増している。ベテラン、若手が顔を揃えたが、男女ともに若い世代の台頭が目立った大会となった。

 

 

【男 子】

60kg級

昨年本大会2位の志々目徹(了徳寺学園職)は2回戦で姿を消し、ベスト4は今年年の学生体重別チャンピオン・宮之原誠也(国士館大4年)、山本達彦(東海大2年)と昨年の選抜で髙藤直寿(パーク24)を破った大島優磨(旭化成)、インターハイチャンピオン・市川龍之介(習志野高3年)、の4人が顔を揃えた。決勝に上がったのは宮之原と山本。4分間で勝負がつかず、ゴールデンスコアにもつれ込み、宮之原が肩車で「技あり」を奪って大会初優勝を決めた。

優勝 宮之原誠也(国士館大4年)

「表彰台の一番高いところに上がった気分は『最高』としか言えません。決勝では、下がったらやられると思って前に出ました。最後の技、これも最高です。海外での成績はないので、いまの自分の力を出し切って頑張りたいと思います」

 

66kg級

大会連覇がかかった磯田範仁(国士館大4年)は3回戦で田川兼三(筑波大3年)に敗退。その田川が決勝まで勝ち進み、一方のヤマからは平成25年以来4年ぶりの頂点を狙う丸山城志郎が駒を進めた。勝負はゴールデンスコアに入り、丸山が腰車で勝負を決めて講道館杯を手にした。

優勝 丸山城志郎(ミキハウス)

「大学2年のときに大ケガをしてからいろんなことがありました。そんな自分にとってここがスタート。ここで勝たないと次がないと思い、試合に臨みました。決勝まで上がれば実力はほぼ一緒。そこからは気持ちの問題で、そこだけは負けないと気持ちが全面に出た試合だったと思います。ただ(ここからは)阿部一二三選手に直接勝って日本代表に選ばれないと意味がありません。グランドスラムで直接対決して勝ちたい」

 

73kg級

66kgの元世界チャンピオン・海老沼匡(パーク24)が階級を上げて出場するも、準決勝で現在波に乗っている立川新(東海大2年)に敗れて3位に留まった。決勝はその立川と、先の学生体重別を制した野上廉太郎(筑波大1年)が対戦。10代二人の戦いは、首抜きによる「指導」で野上が反則負けとなり、立川が昨年に続いて優勝を決めた。

優勝 立川新(東海大2年)

「上に二人(大野将平、橋本壮市)いるので、ここでは負けられない、ここでしっかり勝つことが大切だと試合に臨みました。内容はあまり良くありませんが、落ち着いて試合ができ、確実に勝つことができました。まだまだこれから、海外で成績を出し、(二人と)直接対決できたらと思っています」

 

81kg級

ロンドン五輪2位の中矢力(ALSOK)がこの大会から階級を上げ出場。しかし、3回戦でアジア選手権の覇者・藤原崇太郎(日本体育大1年)に敗れた。決勝は昨年3位の小原拳哉(パーク24)と佐々木健志(筑波大3年)の顔合わせとなり、試合開始45秒で佐々木が腕ひしぎ十字固で「一本」を奪ってタイトルを獲得した。

優勝 佐々木健志(筑波大3年)
「今年は学生、団体と勝てずに悔しい思いをしてきました。決勝はこんなに早く決まるとは思っていませんでしたが、チャンスは逃さないぞと思いました。立ち技から寝技への展開は得意なところなので、自分の長所を生かすことができたと思います。まだシニアの大会で活躍することはできていないので、これから世界に出ても活躍できるような選手になりたいと思います」

 

90kg級

昨年この階級を制し、今年の世界選手権団体の優勝メンバーである長澤憲大(パーク24)は、準決勝で釘丸太一(センコー)に敗れ、ベテラン・加藤博剛(千葉県警察)は2回戦で一回り下の原田昌寛(桐蔭横浜大3年)に「指導」の差で退けられた。決勝は釘丸と今年の選抜の王者・向翔一郎(日本大4年)の対決に。試合開始から2分、向が背負投で「技あり」を奪う。すると釘丸が怒涛の反撃で向を「指導」2まで追い詰めたが、そこでタイムアップ。向が初優勝を飾った。

優勝 向翔一郎(日本大4年)

「誰が世界に出てもおかしくない90kgなので、ここでいいアピールをしたいと必死でした。決め手となった背負投は練習してきた甲斐があったと思います。この優勝に満足せず、いろんな人に助けてもらってここにいるという感謝の気持ちを忘れずに精進します」

 

100kg級

期待のジュニア・飯田健太郎(国士館大1年)が準決勝で西山大希(新日鉄住金)を下して決勝へ。ベテランの下和田翔平と顔を合わせた。188センチの飯田と194センチの下和田という長身同士の対決は、ゴールデンスコアに突入。その1分13秒、下和田が大外刈で仕掛けたところを飯田が返して「技あり」。嬉しいタイトル獲得となった。

優勝 飯田健太郎(国士館大1年)

「去年、この大会で悔しい思いをしたので、なんとか優勝したいという気持ちで試合に臨みました。決勝は技で決めたかったので、そこは悔いが残りますが、研究され、自分の思うような組手になれない中、最後までしぶとく戦った結果だと思います。世界チャンピオンのウルフアロン選手はずっと追いかけてきた存在。4連敗しているので、グランドスラムではウルフ選手のところまで勝ち上がって絶対に勝ちたいと思います」

 

100kg超級

五輪2連覇の故・斉藤仁氏を父に持つ斉藤立(国士舘高1年)がシニアの大会に初登場。2回戦で全日本選手権5位入賞などの実績を持つ上田轄麻(新日鉄住金)に敗れたものの、存在感を見せつけた。一方、実績のある七戸龍(九州電力)、昨年大会2位の太田彪雅(東海大2年)はともに3回戦で敗退。決勝はバルセロナ五輪銀メダルの小川直也氏の長男・雄勢(明治大3年)と元世界チャンピオンの上川大樹(京葉ガス)との対戦。試合時間1分55秒、小川の大内刈が見事に決まって、「一本」。明大の先輩を破って小川の初優勝が決まった。

優勝 小川雄勢(明治大3年)

「このところ結果がでなくて大学にも迷惑をかけ、ライバルとも差がついてきていましたので、ここで優勝できて嬉しい。決勝は強い先輩で憧れでもある上川先輩の胸を借りるつもりで戦いました。優勝といっても紙一重の試合が多かったので、もっと地力をつけなければいけないと思ってます。グランドスラムでは優勝という結果をしっかり残せるよう頑張りたいと思います」

 

【女 子】

48kg級

昨年の大会覇者は今年の世界選手権でチャンピオンになった渡名喜風南(帝京大4年)。その渡名喜に続け、と熱い戦いが繰り広げられた。そのなかを勝ち上がったのは、昨年3位の遠藤宏美(ALSOK)と、優勝経験がある森﨑由理江(宮崎大教員)。二人の戦いは遠藤に軍配が上がり、大会初タイトル獲得となった。

優勝 遠藤宏美(ALSOK)

「今回は結果を出さないといけなかったので優勝は嬉しいです。決勝は相手選手のことは考えず、いつもどおりに自分の柔道をすることだけを考えて臨みました。この階級には日本代表として強い選手が二人(渡名喜、近藤亜美)います。でも、ここでの勝利は次につながったと思うので、自分も勝てるように頑張ります」

 

52kg級

この階級の注目は阿部一二三(日体大2年)の妹で、現在世界ジュニアチャンピオンの阿部詩(夙川学院高2年)。年上の選手を次々に破り、期待通り決勝まで勝ち上がる。一方のヤマから勝ち上がったのは、73kgで優勝した立川新の姉で、ユニバーシアード覇者の立川莉奈(福岡大3年)。二人の熱い対決を制したのは阿部。ゴールデンスコアに入って放った大外刈で「技あり」を奪い決着をつけた。阿部はシニア大会での大きな一勝を手にした。

優勝 阿部 詩(夙川学院高2年)

「この大会は何が何でも勝ちたかった。自分の柔道は一本を取りにいく柔道なので、決勝でも最後まで決めたかった。(去年は大会3位だったが)去年よりも自分に自信がついたところが成長したところだと思ってます。この階級には世界チャンピオンと世界2位の二人(志々目愛、角田夏実)がいるので、この優勝を二人の元につなげていきたいです」

 

57kg級

今年の世界選手権混合団体代表で32歳になった実力者・宇高菜絵(コマツ)。試合中に足を痛め、準決勝では抑え込まれて動けなかったが、それでも3位決定戦に出場。敗れたものの、そのファイトに会場から拍手が起こった。決勝に上がったのは、山本杏(パーク24)と渡部優花(ALSOK)。ここ数年、勝利から遠ざかっていた山本が開始1分過ぎ、袖釣り込み腰を放つ。これが見事に決まって「一本」。久々の勝利に溢れる涙が止まらなかった。

優勝 山本 杏(パーク24)

「ここに来るまで、本当に遠回りをしました。“山本は終わった”と思っていた人もいると思います。大学を卒業し、改めて社会人としてやり直そうとここまでやってきました。諦めずにやってきてよかった。(注目されていた)高校生の頃は怖いもの知らずで、生意気なんじゃないかというくらいでした。“そこからさらに力がついてきているのだから、できないはずはない”と今日は戦いました。まだ23歳。これまでやってきたことを積み重ねて、頑張っていきたいと思います」

 

63kg級

リオ五輪の代表・田代未来(コマツ)がケガから復帰。決勝まで勝ち上がる。対するは、全日本ジュニア2位の嘉重春樺(東大阪大敬愛高3年)を破って勝ち上がってきた土井雅子(環太平洋大4年)。4分で勝負はつかず、ゴールデンスコアに入って3分が過ぎ、小外刈で田代を破って土井が優勝を飾った。

優勝 土井雅子(環太平洋大4年)

「初優勝、嬉しいです。田代選手は強くて少し緊張しましたが、今までやってきたことを思い出したら自然に体が動きました。これまで梅木真美先輩(ALSOK)の背中を追いかけてきましたが、これで少しだけ近づけたかなと思います。グランドスラムで選ばれたら、一つひとつ勝ち上がっていきたいと思います」

 

70kg級

この階級の優勝候補の筆頭は、昨年の覇者で先の世界選手権混合団体メンバーの新添左季(山梨学院大3年)。予想通り、決勝まで順調に勝ち上がる。一方のヤマから上がってきたのは、田中志歩(環太平洋大1年)。全日本学生でも決勝で戦った二人。勝負はやはりなかなかつかず、ゴールデンスコアにもつれ込み、「指導」の差で、新添が学生大会に続き勝利を手にした。

優勝 新添左季(山梨学院大3年)

「学生大会でも戦ったので、力的に差はないと思います。(勝てたのは)気持ちの差かと思います。相手の技を切り替えしつつ、自分のチャンスを作ろうと思ってやってきました。来年度は国際大会でも成績を出していきたいと思っています」

 

78kg級

全日本実業個人4連覇中の濵田尚里(自衛隊体育学校)が優勝候補。オール一本で決勝へ。対するは、学生チャンピオンの泉真生(山梨学院大3年)を下して勝ち上がってきた高校生・和田梨乃子(大成高3年)。試合開始から1分、まず和田が小外刈で「技あり」で先行。濵田は小外刈で「技あり」を奪い返すと、さらに腕ひしぎ十字固で「一本」。2年ぶりの王座についた。

優勝 濵田尚里(自衛隊体育学校)

「ここで優勝することだけ考えて1年間練習してきました。決勝では先にやられましたが、試合時間のなかで取り返して勝てればいいと思っていました。これから国際大会で1つずつ勝っていき、世界代表になれるよう頑張ります」

 

78kg超級

注目は高校生の素根輝(南筑高2年)。春の高校選手権、インターハイ、そしてシニアでも全日本選抜を制して波に乗る。その素根を決勝で制したのは、学生チャンピオンの井上あかり(環太平洋大3年)だった。試合開始わずか1分で、うずくまった素根を返し、肩固で抑え込んで鮮やかな一本勝ちを収めた。

優勝 井上あかり(環太平洋大3年)

「優勝は嬉しいです。素根選手は組み手も技もうまいので、組み手の徹底と、寝技を意識してやってきました。優勝できたことで、次の世界を目指してこれから頑張っていきたいです。まずは来月のグランドスラムで優勝して世界で通用する選手になりたい」

グランドスラム東京2024

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