――そうした違いのなかで、選手の信頼をどのように得ていきましたか。
一生懸命にやってくれる選手をつかまえて教え込み、その子が結果を残していくのを見て、やってくれるようになっていった、という感じですね。はじめから全員が私の言うことを聞いてくれるとは思っていなかったので、やってくれる子を強くして勝たせることで、少しずつ言うことを聞いていってもらう、という流れを作りました。やっぱり結果です。結果が出たら、やってくれるんです。
――技術指導以外の面で、重視していることは。
私は服装がだらしなかったりするのが嫌いなので、柔道衣をちゃんとたたむとか、道場の掃除をするとか、時間前行動とか、そういう面はかなり厳しく指導しています。これも最初は全然やってくれませんでしたが、ゴミが落ちていることに気づけないということは、目の前の問題に気づけないということだよ、それでどうして技術が身につくの? とか言ってその必要性を理解させました。
今では、選手同士で声をかけあって時間に遅れないようにしたり、掃除もできるようにはなりました。選手たちは私のことを怖がっていますが(笑)。
どうしてこういう指導が必要かというと、子どもたちは町のクラブで柔道を習ってくるわけですが、クラブの数が多くて生徒の取り合いも激しいので、生徒はお客さん扱いされるというか、厳しい指導を受けてくるわけではないんです。カデの強化に入っても帯を自分で結べない子もいるくらいで。だから、私は「ここはクラブじゃないよ、ナショナルチームだよ」といって、余計に厳しく指導しているという事情があります。
――海外で指導することで、日本の柔道について見えてきたことはありますか。
いっぱいありますよ。一つ挙げるとすると、外国人選手は日本人に勝つことに対して、とても強い意識を持っているということですね。日本人に勝ったというだけで、評価が10倍くらいにボンと上がるんです。
実は私はジェルビ選手に、2012年グランプリ・デュッセルドルフで負けたことがあるんですが、それが、イスラエル人が日本人選手に初めて勝った試合だったみたいで。本人からあれで自信がついたと言われて、ちょっと腹が立ったんですが(笑)。でも、それだけ海外の選手は日本人選手を尊敬しているし、なんとしてでも勝ちたいと思っているということなのだと思います。