――収入は?
最初の頃はもうほぼないに等しい状態でしたね。お小遣い程度。でもその代わり、ホームステイさせてもらって、ご飯も食べさせてもらえるという契約でした。1年契約で行ったんですけど、オーストリアのボスから契約を延長したいと言われて1年延長して。再度契約を延長したいと言われたときに、給料を少し多くもらえるようになり、結局、オーストリアには7年いました。その間に、ライブニッツの町に大きなスポーツ施設ができて、生徒も凄く増えたんですが、教え子も柔道の指導ができるように育てていたので、7年経ったときにはもう僕がいなくてもライプニッツは大丈夫だなと思い、オーストラリアに行くことにしました。
――なぜオーストリアからオーストラリアへ?
オーストリアは雪国で、冬がメチャクチャ寒いんですよ。僕は寒いのが苦手なので、次はちょっと暖かいところに行こうかと(笑)。自分でオーストラリアの柔道連盟に連絡して直接交渉しました。オーストリアにいる7年の間に柔道コーチの資格も取っていましたし、自分自身、試合も出ていたので、指導の実績と試合の実績を書いて、オーストラリアの柔道連盟に送りました。それで、採用が決まり、2012年からオーストラリアに来ました。
――オーストラリアは英語だと思いますが、英語は話せたのですか? オーストリアではドイツ語でしたよね。
オーストリアはドイツ語ばかりでしたね。やはり小さい子どもに指導するので、当時のボスから英語は勉強せずにドイツ語だけ勉強してくれと言われて、ドイツ語だけをずっと勉強していたので、英語はほぼしゃべれない状態でした。それでまた、必殺の『旅の指さし会話帳』です(笑)。
――素晴らしいチャレンジ精神ですね。オーストラリアに行って環境的にはどう変わりました?
オーストラリアでも最初はホームステイをさせていただいたので、行った当初は同じような感じでしたね。ただ、ヨーロッパで7年も指導の勉強をしていたので、オーストリアに行くときに比べると断然自信はありました。柔道の指導に関しては、ドイツ語と英語の違いだけで、伝えることは一緒ですから。
――オーストラリアではどういった方々に指導されているんですか?
いまは、オーストラリアのブリスベンにある大濠道場というクラブチームで、4歳ぐらいの小さい子どもから大人まで、週に4日、9クラスを指導しています。あとは、毎週ではありませんが土曜日にクイーンズランド州のジュニアヘッドコーチとして指導をしています
――オーストラリアの柔道と日本の柔道はどんなところが違いますか?
日本は子どもの頃からしっかりと基礎を学び、「崩し」や「作り」や「掛け」により、きれいな技で相手を投げますよね。でも、オーストラリアはまだ力任せに投げるところが多いので、そこがまず違うと思います。あと、根本的な柔道人口が違いますね。オーストラリアは去年の時点で6355人しかいません。町道場や先生の数も日本と比べて少ないです。あとは、企業に柔道チームがあるところがないんです。