宮坂 千優(みやさか ちひろ)1995年 長野県生まれ
オーストラリア パース UWA JUDO CLUB コーチ
講道館柔道女子三段
主な戦績
2017年 関東学生柔道体重別選手権大会 70㎏級 第2位
2018年 全日本実業柔道個人選手権大会 70㎏級 ベスト8
主な指導歴
2020年~2022年 長野県松商学園非常勤講師、柔道部コーチ
はじめまして、宮坂千優と申します。日本の女子柔道の歴史を築いてきた先生方の跡を継ぐことに大変恐縮しつつも、この度筆を取らせていただきます。この機会を与えてくださった大学の大好きな先輩である深見利佐子さん、関係者の方には、心から感謝しています。
まず、私の柔道史を簡単に紹介させていただきます。幼少期から柔道に魅了され、決して強くはなかった高校時代、同郷で同い年の堀川(旧姓:津金)恵さんと同じ舞台に立ちたいと願い、筑波大学に進学しました。入学当初は周囲とのレベルの差に圧倒され、周りと比較し焦りや落ち込むことも多くありましたが、強くなりたい一心で練習に励み、年々成長を実感できました。また、大学、大学院在学中に多くの国の選手と出会い、日本との練習の仕方、柔道に対する価値観の大きな違いに関心を抱き、海外指導に惹かれていきました。院卒業後、現在勤めているクラブからお誘いがありましたが、コロナ禍で渡航が叶わず、地元の松商学園高校で講師および柔道部のコーチとして活動し、日本一を目指す選手たちの育成に尽力しました。3年弱という短い教員生活は非常に濃く、生徒との時間はかけがえのないものでしたが、かねてからの目標であった海外での指導が諦めきれず、2023年8月からオーストラリアのクラブでコーチを務めています。慣れない環境や言語の壁に苦労しながらも、柔道で出会った仲間や生徒たちとの日々は非常に刺激的で私自身の成長を実感する毎日です。オーストラリアは柔道人口が日本よりも少なく、特にパースは他の都市との距離も遠いため、試合に参加する機会や練習試合を組むことが難しい環境です。しかし、クラブのコーチたちと協力し、選手の強化や競技人口の増加に努めることに大きなやりがいを感じています。2032年のブリスベンオリンピックを目指す女子柔道選手が在籍しており、その夢が叶うよう全力を尽くしていきたいと思っています。
終わりになりましたが、これらの経験から、皆さんに伝えたいことは、2つあります。一つ目は、あなたらしさを大切にするということ。柔道は、こういう人が絶対に勝つという正解がないと私は思います。誰もがその人の身体と思考を、時には周りと比べて劣っていると感じるものでさえ使い方次第で大きな武器にできる競技です。私もかつてそうでしたが、周りと比べて落ち込んだり、卑下したりするのではなく、自分の持つありのままを最大限に活かすことを大切にして欲しいなと思います。二つ目は失敗を恐れないということ。技に入る時、相手と対峙した時、初めての大きな試合など、誰しも緊張や恐怖心を経験することがあると思います。これは柔道に限ったことではなく、これからの人生でも多々そういう場面に遭遇します。その時に、失敗したらどうしようと縮こまるのではなく、とにかく覚悟を持ってやり切ること。大切なのは、失敗を恐れないために、準備をし、さらには失敗してもそのあと立ち上がれるかどうか。失敗したら負けではありません。本当に自分が叶えたかったものを途中で諦めてしまった時が負けだと思っています。
柔道は常に私に夢を与えてくれました。そして、正しい努力を続けていれば必ず目標に近づき、その先には思いも寄らなかった場所や素敵な出会いがたくさんあることを教えてくれました。人生には思い通りにいかないことも多く、諦めたくなることもあると思います。しかし、一度きりの人生、納得がいくまで精力を注ぐ経験は、結果がどうであれ、必ず何か大切なものを得ることができます。私もまだ挑戦の途中ですが、柔道があるからこそ、前進し続けられる喜びを感じています。この喜びを柔道を通じて多くの方に伝えていけたら嬉しいです。