プロフィール
坂中 優理子(さかなか ゆりこ/旧姓:永田)1987年 静岡県生まれ
いわた総合スポーツクラブ・SSU柔道クラブ代表
講道館柔道女子参段
この度、大学(高岡法科大学)の後輩である大石(旧姓:千葉)夕貴さんからバトンを引き継ぎました、坂中優理子と申します。素晴らしい先生方、トップアスリートの方々ばかりで私で良いのかと恐縮していますが、目指していた結果に届かなかった私が現役を離れても柔道と関わり続けている理由、結果を残す事だけではない、柔道の魅力や柔道を通して得られるものをお伝え出来ればと思い今回バトンを繋がせていただきました。
私と柔道の出会いは、兄が柔道の稽古後にお菓子をもらって帰って来て「ズルい!」と騒ぐと、道場の先生に「柔道始めたらあげる!」と言われて、お菓子欲しさに始めたのがきっかけでした(笑)。小学校入学前から始め、卒業後は兄を追いかけそのまま女子柔道部の無い静岡学園中学、高校に進学し、6年間男子の中で稽古稽古の青春を送りました。
卒業後も人数は少ないものの、今も女子柔道部として後輩達が続いてくれている事を嬉しく思っています。
そしてコラムにも登場した吉見浩二先生に声を掛けていただき、高岡法科大学に進学しました。楽しそうに大学生活をエンジョイする友人達とは違い、雪国富山での生活はとても辛かったです(笑)。親元を離れたことで両親への感謝の気持ちが強くなり、恩返しをしたい一心で4年間柔道漬けの毎日を送りました。寮生活をし、辛い練習を共に乗り越え一生の仲間も出来ました。吉見先生は柔道だけではなく、世に出て恥ずかしくないようにと料理や礼儀など色々な事を勉強させて下さいました。
目標とした実績は残せませんでしたが、全日本ジュニア、全日本学生、講道館杯、国体、都道府県対抗全日本女子柔道大会など、代表として出場し大舞台を経験し、トップ選手の柔道を間近で感じる事ができ、とても良い経験でした。
大学までの柔道人生の中で一番得られたものは、感謝の気持ちを持てるようになったことです。自分が頑張れたのも親や友達、周りの方々の支えがあったからだと思います。生意気な思春期に柔道の質だけではなく、心を成長させる為に時には厳しく指導して下さった中高監督の渡部先生や、大学監督の吉見先生をはじめ、恩師への感謝の気持ちを強く持てるようになりました。そして柔道を通して一生の仲間や尊敬する恩師などたくさんの出会いがあった事。この二つは今もこれからも私の人生になくてはならないものです。
大学4年生では怪我に悩み思うように柔道が出来ず、就職は地元に戻り柔道とは離れた生活を送っていました。柔道と関わる事はもう無いと思っていた私が、主人と出会い結婚をした事をきっかけに、主人の大学の恩師であり私にとっては中高の大先輩である、当時の静岡産業大学柔道部監督に声を掛けていただき、SSU柔道クラブを新しく立ち上げる事となりました。私が道場の代表をとして、生涯柔道に携わって行くとは誰も想像していなかったと思います。誰より自分自身が一番驚いています。正直最初は私などが指導者なんて出来ないし、自信無いしやりたく無い…と思っていました。当時まだ0歳の娘の初めての育児に追われていたので不安でしかありませんでした。そんな私を変えてくれたのは道場の子供達でした。私を先生と慕い信じて一生懸命取り組む姿、柔道を知らないところから柔道に夢中になって行く子供達、大好きなこの子達の為に私も成長したいと思えるようになりました。指導者になり、指導の難しさや柔道の奥深さも知ったことで、恩師やずっと支えてくれた両親への感謝の気持ちが更に強くなりました。主人は会社員をしながら静岡産業大学の監督として活動しています。道場(SSU柔道クラブ)のスタートと同時期に2人目の妊娠出産。新生児からの育児と指導を並行するのはとても難しいことでした。夫婦共々地元を離れている為、頼るところが無く常に子供がセットでした。審判・指導者講習会に参加する事や小さい子供を連れての試合、日々の練習もとても難しく悩み苦しむ日々でした。悩みながらも柔道連盟の先生方や道場に来られる保護者の方々など周りの支えや理解があり、立ち上げから7年が経過しました。子供達は試合に勝ちたい!と頑張っているので強くさせてあげたい。勝つ喜びを知ってほしいという思いもありますが、柔道で得られる『試合で勝つ』以外のたくさんのものを子供達にも得て欲しいと思って指導しています。今、私は7歳の娘と4歳の息子を育てていますが、我が子のように愛しく可愛い道場の子供達が卒団生を含めて7年間で40人以上います。私の人生の宝物です。その子達がいつまでも帰りたいと思えるような、道場を残して行けるようにこれからも続けていきたいです。そして一人一人の目標、一人一人の心に寄り添い置いてかれる子がいない、柔道が好き、道場が好き、道場に行けば仲間がいると思えるそんな居場所作りをして行きたいです。小学生のうちは習い事を選ぶのは親です。柔道をさせて良かった!SSUを選んで良かったと親御さんにも思ってもらえる場でありたいと思います。そして今年度から静岡県柔道普及委員会女子部役員となりました。指導者をしながら初めての育児、妊娠出産、育児と指導者を両立してきた自分自身の経験を、これから指導者を始める女性柔道家や現在指導者として続けていけるか同じように悩んでる若い世代の女子柔道家に伝えることで、少しでも力になりたいと思っています。
去年試合デビューをした娘のママとしても道場の指導者としても、これからも柔道を通してたくさん成長し、感謝の気持ちを大切にしながら柔道人生を楽しんでいきたいと思います!
次回は、白鵬女子高校柔道部コーチとして活躍されている、伊丹裕子さんが登場します。